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微かな軽蔑の籠った目で軽薄な男たちを見下ろし。
もちろん僕には愛情の籠った微笑みも忘れずに——。
彼は颯爽と困っている禿げ頭の小男に駆け寄る。
そして遠巻きに男の失態を眺める人間が皆恥じ入るような笑顔で
「グラスを持ちましょう。どうぞ使ってください」
純白のハンカチを差し出したのだ。
「君はインペリアルホテルの――」
「はい。九条です」
「ありがとう——次の学会も君のところのホテルのお世話になるよ。父上にもよろしく伝えて下さい」
もちろんその会話は
聞き耳を立てるITくんたちの耳にも届いたはずさ。
「彼が?時代遅れの冴えない二世なの?」
何食わぬ顔で僕が問いかけると
男たちはみな気の抜けたシャンパンみたいな顔して押し黙ってしまった。
仕方ないよ。
形だけじゃなく彼らが目にしているのは本物の男。
「さよなら――僕にふさわしいのは彼みたいな人さ」
僕は男たちの顔も見ずに席を立つと一目散——。
ITたちの言う時代遅れで冴えない二世の元へ向かった。
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