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その呼び名通り
赤子をあやす様に腕の中で僕の事を軽く揺する。
「和樹ごめんね」
「どうして謝るの?」
驚いた。
「僕がもっと君が求めるものを与えられる男であったらいいのに」
この人は本気だ。
「今回改めて思ったんだ――僕が君に与えられるものなんて愛情の押し売りと物理的な充足感、それから?たいしたものないなって」
否定する隙も与えず九条さんは続ける。
「君が足りないと言うのは当然だ。比べたくはないが征司くんは――彼は持ってるんだよ。言葉にするのは難しいけど、もっとエモーショナルな君が求める何か」
エモーショナルな何か?
それを言うならクレイジーな何かの間違いだろう。
「だから?だから君は僕をもう誘わないつもりなの?」
僕はあえてそっけなく尋ねた。
もちろんそんなつもりじゃ困るけど――。
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