43人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
episode255 愛を貪り食うもの
モテる時は人間とことんモテるもの——。
「失礼、誰かと待ち合わせ?」
「それ、僕に聞いてるの?」
「君だよ。君以外に誰がいるの?」
「いるじゃないの。ここは綺麗どころしか集まらないパーティーだ」
青年実業家風の男はきらびやかな照明の下
色とりどりのドレスに袖を通した女の子たちを見回し
「やっぱり君しか見えない」
それでも首を横に振った。
「困ったな」
「1杯付き合ってよ。1杯だけ」
なかなか首を縦に振らない僕のところに
彼の取り巻きと思しき男たちがやってきて口々に言う。
「ボクちゃん、こいつ逃したら後で後悔するよ」
「なんせこの若さで会社を3つも経営してるんだ」
だから僕もわざとらしくない程度に驚いて言う。
「へえ、会社を3つも!で、なんの会社?」
「ま、いわゆるIT企業だよ」
「IT……?」
勝ち誇ったように言うけど。
何だい?ITって。
「ごめん、多分僕の最も興味のない分野だ」
全然ピンとこないや。
「待って待って待って!」
そそくさと立ち去ろうとする僕の前に回り込み
そこそこの値段のスーツを着た男は足踏みする。
最初のコメントを投稿しよう!