episode255 愛を貪り食うもの

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episode255 愛を貪り食うもの

モテる時は人間とことんモテるもの——。 「失礼、誰かと待ち合わせ?」 「それ、僕に聞いてるの?」 「君だよ。君以外に誰がいるの?」 「いるじゃないの。ここは綺麗どころしか集まらないパーティーだ」 青年実業家風の男はきらびやかな照明の下 色とりどりのドレスに袖を通した女の子たちを見回し 「やっぱり君しか見えない」 それでも首を横に振った。 「困ったな」 「1杯付き合ってよ。1杯だけ」 なかなか首を縦に振らない僕のところに 彼の取り巻きと思しき男たちがやってきて口々に言う。 「ボクちゃん、こいつ逃したら後で後悔するよ」 「なんせこの若さで会社を3つも経営してるんだ」 だから僕もわざとらしくない程度に驚いて言う。 「へえ、会社を3つも!で、なんの会社?」 「ま、いわゆるIT企業だよ」 「IT……?」 勝ち誇ったように言うけど。 何だい?ITって。 「ごめん、多分僕の最も興味のない分野だ」 全然ピンとこないや。 「待って待って待って!」 そそくさと立ち去ろうとする僕の前に回り込み そこそこの値段のスーツを着た男は足踏みする。
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