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翌日登校すると、昨日と同じようにあゆみちゃんの周りにはたくさんの子達がいた。いつもと変わらない風景。
けれど、その輪の中に茉紀は堂々と入っていって「あゆみちゃんおはよう。りさちゃんとは仲直りできた? ああ、無理か。友達の彼氏とイチャイチャしてたらそりゃ嫌われても仕方ないよね」と笑いながら言った。周りにいた子達は面食らった様子で、ざわざわとし始める。
「ちょっと! 昨日から何なの!?」
あゆみちゃんは、茉紀を睨み付けながら立ち上がった。あの4人の中でもあゆみちゃんが1番気が強い気がする。
「何ってなに? 本当のことでしょ? ねぇ、皆! この子、友達の彼氏とるから気を付けた方がいいよー! りさちゃんの彼氏の隼人くんとイチャイチャしてたからー!」
教室中に聞こえる大きな声で茉紀が叫ぶ。
「何言ってんの! 皆、こんなの嘘だからね! こんな人の言葉信じることないよ!」
「信じなくてもいいけど、好きな人とかぽろって言ったら盗ろうとするから気を付けたほうがいいよ。もう、恋泥棒さん」
そう言って茉紀はふふっと笑った。とっても綺麗な笑顔をしているけれど、言っていることは強烈だ。
「あんた何わけわかんないこと言ってんの! 一さんも黙ってないでこの人止めてよ!」
あゆみちゃんは、私の方にまで鋭い眼光を放ちながら訴えかけてくる。
去年はまどかちゃんと呼んでくれたのに、今では苗字にさん付け。あからさまな態度が余計に辛くさせる。しかし、りさちゃんと付き合っていた隼人くんと内緒で会っていたという事実を知って、私は軽蔑に似た感情を抱いていた。
嫌われて辛いというよりも、怒りの方が上回った。
「ねぇねぇ、まどかによくそんなこと言えるよね。友達面して近付いて、まどかが好きだった子、りさちゃんと協力して盗ったじゃん」
「べ、別に盗ったわけじゃ……。隼人くんがりさのこと好きだって知ってたから応援しただけだし!」
「でも、まどかが好きだったの知ってたんでしょ? 男を盗りたいがために友達のふりするんだよ? 皆、気を付けて。コイツ、あんた達のこと友達なんて思ってないから。あんたっちの男を盗るために機会伺ってるだけだよ」
「適当なこと言うな!」
「どこが適当なの? りさちゃんのことだって友達だなんて思ってないんでしょ? せっかくくっつけたのに横取りするんだから」
「ち、違うよ! 隼人くんがりさより私の方が可愛いって言うから! ……あ」
思わず口走ってしまった言葉を飲み込むかのように、急いで両手で口を覆ったあゆみちゃんだったが、周りの子達の顔は明らかにひきつっていた。
「ふーん。じゃあ、隼人くんにりさちゃんは友達だから、友達の彼氏とは付き合えないって言えばよかったじゃん。りさちゃんにも、私にこんなこと言ってきた最低な奴だったよって教えてあげればよかったじゃん。結局、自分の方が可愛いって言ってもらえたことが嬉しくて乗せられただけでしょ。それってあんた自身もりさちゃんより自分の方が可愛いって思ってたってことだよね? 自分よりもブスなりさちゃんが彼氏に振られると可哀想だから言ってあげなかったの? わぁ、優しいね、あゆみちゃん」
わざとらしく棒読みな茉紀。
どうしてこんなに色んな言葉がスラスラ出てくるんだろうかと不思議でならない。
私だったら本人に絶対にこんなこと言えない。だけど、おそらく茉紀が言っているようにあゆみちゃんは、自分の方が可愛いと思っていたんだろうなと私を含めた周りの子達を思わせるには十分な程影響力のある言葉だった。
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