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茉紀の言葉に、私は彼女達の表面しか見えていなかったのだと気付いた。
きらびやかで華やかで、人気者。
4人揃うと迫力があって皆が憧れる存在。けれど、それはアイドルと同じで、1番綺麗な自分をその場だけ演じているだけ。
腹の中ではお互いに誰かのことを自分よりも下に見ていて、笑っていた。4人にとって私は友達ではなかったけれど、各々以外の3人も別に友達ではなかった。
似た者同士が集まって1つの塊になったに過ぎない。私は、何でこんなものに憧れたんだろう。
興味が冷めていくのを体感しながら周りを見渡せば、他の子達も同じように冷めた目付きをしていた。皆、私と一緒だ。あんなものに憧れて、表面だけ見て、羨ましがる。
「ああいうのは、見て楽しむものであって深入りしたらダメなの。人間には、深く関わっていい人間と、上辺だけにしておいた方がいい人間がいるだよ。そりゃ、皆が皆友達になれたらいいけど、友達の定義なんて全員違うから。似た価値観を持つやつを探すしかない。あれは、あんたとは違う人種。だから深入りしたらダメ」
そう言う茉紀の顔は、真剣そのものだった。出会った頃から見た目も言うことも大人びでいた。同じ中学生とは思えない程。
4人がどうなったかと言えば、当然その後は解散した。
それぞれの母親も、誰かしらの母親のことを馬鹿にしていたのが広まり、家族ぐるみの付き合いもなくなったらしい。
取り巻きをたくさん仕えていたあゆみちゃんは、教室内で孤立することになった。
体育での授業中、彼女はポツンと1人でいた。その姿が以前の自分と重なり、可哀想に見えた。
何もできないけれど、せめて何か話しかけようかと思った私に「同情ならやめときな。人は、本当に変わりたいって思った時しか変われない。アイツは変われない側の人間だよ」と茉紀が言った。
暫く見ていると、私と同じように思ったであろう子が話しかけていたが「誰があんたと組むと思ってんの?」と言って睨み付けていた。そんな彼女を一瞥して「ほらね」と茉紀は言った。
見た目が派手で校則も無視するような茉紀。
先生には毎日怒られてるし、母親の呼び出しも絶えない。
皆は怖がって茉紀に近寄ろうとはしないけれど、茉紀のことを悪く言う人間はあまりいなかった。単純に4人組の性格の悪さが表立ったことで、話題がそちらにばかり集中したというのもあるのだけれど。
茉紀とはそれ以来、休みの日でも会うようになった。
茉紀の家に遊びに行くと、彼女の母親が笑顔で出迎えてくれた。現在の茉紀と似ている黒髪の美人。茉紀みたく派手で怖そうな人を想像していたのに、全くイメージと違った。ただ、明るくハキハキと喋るところは似ていた。
夏休みになると、茉紀は私にメイクの仕方や流行りのオシャレを教えてくれた。
茉紀の私服を借りて、街に出かけることも多くなった。知らない男に「ねぇ、どこの高校?」と話しかけられることもあり、「まだ中学生です」と答えると、犯罪の匂いを感じてかすぐに相手は逃げ出した。
オシャレに興味が湧き、メイクもファッションも拘ってくると、常に私達よりも先を行っていた私の姉が、高校生の仲間達と買い物に連れていってくれるようになった。
バイトをしている姉がメイク道具をプレゼントしてくれたり、姉の彼氏が私と茉紀に服を買ってくれたり。
今になって思えば、高校生で何であんなにお金があったのかが不思議だが、知らない方がいいこともある気がして、未だにそのことには触れていない。
中学生から見る高校生はとても大人で、私達は姉達といることが多くなった。
姉の行った高校はそれ程校則も厳しくはなく、学校にメイクをしていってもそこまで注意されることもなく、スカートだって短かった。
髪も多少茶色かったし、高校生の制服姿が可愛かった。姉が「休みの日はいいけど、高校までは我慢しな。高校いけなかったらどうすんの」なんて言うものだから、私達の中で1番影響力のある姉の言葉に従った。
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