結婚相手に求めるもの

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 夜勤は16時半から翌朝の9時までで、途中交代で2時間の仮眠時間があるものの、忙しくて時間通りに入れなかったり、急変や逝去される方がいれば休憩時間などなく17時間近くぶっ続けで業務をこなす日だってある。  今日は比較的落ち着いていた夜勤だったが、それでも瞼は重い。本来人間が寝ている時間に働くというのは、いわば自然の流れに逆らうのと同じことだ。  体はとうに悲鳴をあげている。 「じゃあ、近藤さん。後はお願いしてもいいですか?」 「いいよ、いいよ。帰って」 「ありがとうございます。では、あとお願いします」  今日の日勤リーダーとなる近藤さんは、日勤職員全員をまとめる役割がある。仕事のやり残しがないことを確認し、近藤さんに申し送りをすると、私は休憩室へ向かった。 「お疲れ様です! まどかさん帰るんですか?」  後輩の千尋(ちひろ)ちゃんが話かけてきた。私と同じく短大卒業で入職してきた千尋ちゃんは、私がプリセプターとして1から仕事を教え、5年間共に働いてきた可愛い後輩である。  最初はあんなにびくびくおろおろしていたくせに、今では介護職が板について利用者さんの前でも明るく元気に仕事をしている。私にだって最近は愚痴や冗談を言ってくるほど気を許せるようになったようだった。 「帰るよー。帰らせてよ。もう、無理」  主任になるかならないかの時に出会った彼女には、主任としての威厳を……なんてことを言っていられずについ私も本音が出てしまう。 「えー、まどかさん帰っちゃったらつまんないじゃないですか」 「つまんないってなによ。私はもうお年頃なの。体がついていかないの」  これ、本当。年上のお姉さま方から加齢は怖いわよーなんて脅されてはきたが、まさかこんなにも20代と30代の違いが恐ろしいとは思ってもみなかった。 「それわかります! 私も夜勤終わったあとはへとへとですもん!」 「20代がなに言ってんのよ」 「でもまどかさん、32歳には全然見えないですよ! 美人だもん。私と同い年って言ってもわかりませんよ!」 「それは褒めすぎ。そんなに褒めても仕事手伝わないからね」  褒めちぎる千尋ちゃんは明るく笑った後、「えー、まどかさんなら手伝ってくれると思ったのに。お休み楽しんで下さいね」と小さく手を振った。
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