結婚相手に求めるもの

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 施設によってシフトの組み方は違うと思うが、私が勤める施設では、夜勤が長い分翌日は必ず休みになっていた。明日の休みは何しようかななんて考えてみる。  交代勤務の私達は平日休みの方が多く、どこかへ出かけるといった場合にはどこも空いていて行動がしやすい。しかし、土日休みの友達とは予定が合わせづらく、休みは大体1人で過ごすことが多かった。  休憩室へ入り、バッグからスマホを取り出す。メッセージアプリのサインから通知がきていた。開けば思わず顔が綻ぶ。メッセージを送ってきた主は、結城(ゆうき)雅臣(まさおみ)、私の彼氏だった。  彼とは5年前、私の主任昇進が決まった時に出会った。「主任になんかなりたくない。結婚してすぐに辞めたい」とぐずぐず愚痴っていた私を、産休明けの先輩が開いてくれた飲み会での出来事だった。  入社して3年目の時、当時の静岡市長の知り合いであったうちの施設長から、市の広報の職業紹介用で写真を撮らせてくれないかと頼まれたことがあった。  たかだか市の広報だし、どうせ高齢者くらいしかみないだろうからまあいいかなんて安易な気持ちで引き受けたところ、〔美人過ぎる介護士〕と騒がれてしまい、地元のテレビ局で取材を受けることにもなった。  当時は私も若かったし、色んな人に声をかけられ、色んな男性からも声をかけられた。しかし、しょせんは地元の時の人。全国的に人気が出たわけでもない私の人気はあっという間に過ぎ去った。  今の20代前半の子は既に私のことなど知らないだろう。  広報に掲載されてから4年が経ち、地元の誰もが私のことなど忘れてしまった頃に出会った彼が結城雅臣だった。彼は、私の顔をみて「一まどかさんですよね」と言ったのだ。  ほとんど一目惚れだと言った彼と付き合い始めたのは、それから3ヶ月も経っていない頃だった。  1つ年上の彼のことを周りの友達は「イケメンの彼氏でいいね!」と言うが、正直私の好みではなかった。  私は、誰もが羨むイケメンと付き合って鼻を高くするタイプではない。  他人から羨ましがられるよりも、自分が好きだと思える相手といたいだけだ。だから周りがいくら彼のことを勧めても、それ以外の何かを好きになれなければ彼と交際することもないと思っていた。
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