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「私、選択肢は3つあると思ってる」
茉紀は冷静にそう言った。現在2つ目までは出ている。
「3つ? あと1つは?」
「とりあえず、今の男はキープしておいて、新しい恋人を探す」
「キープって……そんな若いカップルでもあるまいし……」
「もしまどかが彼と別れて婚活始めるとするじゃん? 別に方法は紹介でも相談所でも飲み会でもなんでもいいと思うんだけど、そこで本気で好きになれるような男が見つかるなら別れた意味はあると思う。彼の顔色伺ってコッソリ男探しする必要もないし、堂々と婚活中ですって言えばいいと思うよ」
「うん……」
「でも、もしそこまで好きにはなれなくて、今の彼と同じくらいのまぁ、結婚してもいいけど。っていう程度の男と結婚を決めるなら、今の彼でいいと思う。だって、新しく付き合った彼が絶対に浮気しない保証はないからね」
「そうだよね……あー、そうだよね。結局自分が本気で好きになれないなら、誰と結婚したって一緒なんだよね」
茉紀のいう通りだ。適当に結婚相手を見つけたところで、今回のように浮気されたら意味がない。今のところ私は、雅臣に浮気されている以外では被害はない。
デート代をこちらが出すわけでもないし、毎回送迎もしてくれる。形だけだとしても優しい言葉をかけてくれる。確かに裏切られたことへの憤りはある。しかし、考えてみれば特に損害もなかった。
「そういうこと。だから、今の彼と結婚を考えつつ、好きな男ができたら証拠を突き付けて別れたらいいじゃない。できなければそのまま結婚。あんた昔からモテるんだから、それくらいのことできるでしょ」
「それ、いつの話よ。そりゃ20代の頃はモテたわよ。可愛いも綺麗も言ってくれる人はたくさんいた」
「……そうだろうね」
「でも年をとるに比例して、言われる数は少なくなっていくわけ」
「まどかでもそうなの?」
「そりゃそうでしょ。それに周りは皆彼氏がいることも知ってるし、男がいるイベント事は断ってきたんだよ? 今更ちやほやしてくれる男なんていないよ」
こんなことなら20代、もっと色々物色しておけばよかったと後悔する他ない。
「あんた、モテるしそんなに好きじゃないって言うわりに、バカ真面目に一途だからね」
「それが私の悪いところ」
「いや、いいところでしょうが。そんなまどかを裏切るなんて、本当のクソ野郎だね。そりゃちょっと顔がよくて金持っててしゅっとしてる……好条件なのがまたムカつくよね」
「それー!」
ダイニングテーブルに伏せったまま両手を伸ばして項垂れる私と、深い溜め息をつく茉紀。
なんにせよ、私は茉紀のいう3つの選択肢からどれか1つを選ばなければいけないようだった。
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