結婚相手に求めるもの

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「その辺にゴロゴロいるレベルの男なら、すぐにだって捨てられるだよ。でも年収1千万前後なんてそうそういないし。収入だけでみたら、すぐに捨てるのは惜しいの」 「まあね。でも、1番厄介なのは捨てられることよね」  茉紀はそう言って1口コーヒーを飲んだ。茉紀の喉が上下するのと連動するかのように、私も息を飲んだ。 「それ、私も考えた。もしかしたら、今はむこうが本命なのかもって」 「あり得なくもないからね。でも、どうだろう。その女が何の職に就いているかわからないけどさ、そんな派手めの女を結婚相手に選ぶかなとは思う。父親も税理士で、いい大学出させたわけだら? エリート街道まっしぐらの息子がそんな女を連れてきて両親が許すとも思えないけど」 「そうだよね……。お父さん、結構厳しい人だって言ってたから、そう簡単に結婚ってわけにはいかないと思うんだ。でも、人は見かけによらないっていうし、もしかしたら高学歴のいいとこのお嬢様かも……」  私はそう言って、茉紀と視線を合わせる。しかし、次の瞬間には「ないか」と声を合わせて言った。 「まあ、まどかが別れる気が少しでもあるなら、振られたら振られたでしょうがないって割り切ればいいんじゃない? その間に他の男探しなよ」 「うーん……振られなかったら?」 「振られなかった場合は、さっき言った3つの中から選ぶだね。振られる前に振っておくのも自尊心を守る1つでもあるけど」 「裏切られた現場を見せつけられて、私の自尊心なんてとっくにズタズタよ。今更振られたからってあの時程の衝撃はないわ」 「そ。じゃあ、考えて決めれば」 「うん。ありがと。ちょっと現実的な考え方ができた気がする……」 「時代が時代だし、結婚しないっていう手もあるけど」 「私、体裁は気にする方なの」 「見栄っ張り」 「見栄張らずに生きられたら楽なんだけどな。生きづらい人生だわ」 「どっからの目線で言ってんだよ……」  茉紀はすっかり呆れてしまっている。振られるかどうかは後にして、やはり私は茉紀が提案した3つの中からどれか1つを選ぶしかなさそうだ。
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