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今度は鬱憤が溜まった茉紀の話に移行し、旦那の愚痴、旦那の両親の愚痴、子育ての大変さを気が済むまで聞かされることになった。
麗夢が産まれたばかりで、他の友達も気を遣ってあまり遊びにはこないのだろう。彼女の愚痴は留まることを知らず、一度流れ出したら怒涛の如くぶちまけるのだった。
ようやく話が途切れたところで、私はさすがに限界を迎えそうな眠気に耐えながら、彼女の家を後にすることにした。
茉紀にお礼を言って、麗夢の写真を更に何枚か撮ってから私は帰宅した。雅臣が近くにいないことと、茉紀に相談にのってもらったことで、気持ち的に楽になったのか、私の眠気は限界をとっくに超えていた。
ふらふらの体でなんとか帰宅し、昨日仕事を終えてから今まででシャワーも浴びていないけれど、そんなことなど考えてもいられなかった。私は、リビングに入った途端、ソファーへと倒れこみ、そのまま死んだように眠った。
お昼過ぎには帰ってきたはずなのに、ふと目を覚ませば辺りは真っ暗で、時計は夜中の1時を差していた。
うそ……12時間くらい寝てたってこと? 久しぶりにこんなに寝た。寝るのだって体力がいるし、最近では夜中に目を覚ますことも度々あり、続けて6~8時間寝られることも珍しいくらいだった。
私の体、やっぱり疲れてたんだななんて思いながら体を起こせば、ソファーで縮こまって寝ていたせいか、関節の節々が痛かった。
「いたたたたた……」
完全に肩もこってしまっている。とりあえずシャワーでも浴びるかなんて思いながらスマホを開けばラインがいくつか届いており、着信履歴も残っていた。
麗夢が音に反応して起きちゃった時に、音切ったんだっけ。そう思い出し、それぞれを開く。
着信は全て雅臣で4回の履歴が残っていた。旅行中ご苦労様。電話をかけてきて今度は何を聞きたかったのか。私は続けラインも開いてみた。
〔まきちゃんちどうかな? 楽しんでる? さっきは変なこと聞いてごめんね。ゆっくり楽しんできてね〕
〔さっき電話したけど、気付いてないのかな? ラインも見てない? お昼ご飯食べたかな? ちゃんと休みの日は体休めてね〕
〔まどか? 大丈夫? 俺、何かしちゃったかな? 気付いたら連絡ほしいな〕
〔今日のゴルフは終わりだよ。近くのホテルに泊まって、明日も朝からコース回るつもり。電話も出ないし、既読もつかないから心配してます。大丈夫?〕
〔まだまきちゃんちにいるの? そんなことないよね……。さすがに小さい子供がいるのにこんなに夜までいないよね。どうしたの?〕
〔心配しています。せめて1回くらい連絡ください。何か気に障ることをしたのなら謝ります〕
〔まどか? もうちょっとしたら俺もう寝るよ……。大丈夫かな?〕
いつもとは比べ物にならない程の連続ラインが彼から届いていた。浮気がバレたかもしれない、証拠を撮られたかもしれないと気が気じゃないのだろう。
だからってあからさまにこんなに連絡きてきたら逆に不自然だって。そう思いながら、自然に出た溜め息は、すぐにその場の空気に溶けて消えた。
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