タイプじゃない

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タイプじゃない

 目が覚めると、辺りは明るく朝であることを理解した。はっとしてスマホの画面を表示させ、時間を確認すれば時刻は7時26分だった。 「ヤバい!」  私は飛び起きて、掛け布団はぐちゃぐちゃのまま、Tシャツを脱ぎながら洗面所へ向かう。急いで顔を洗って、歯を磨く。時短のために化粧水と乳液は一緒に出してコットンでささっと伸ばした。  今日は日勤で、8時半から仕事だ。ここから職場までは20分。申し送りや情報収集の時間を考えると、8時15分には作業服に着替え終わってフロアにはいたいところだ。  逆算すると、どんなに遅くても7時50分には家を出たい。  あと20分しかない!  焦りながら着替えをする。朝ごはんは食べている暇がないし、水分だけ摂っていこうと、冷蔵庫から麦茶を取り出す。冷たい麦茶をコップに注ぎ、ポットの湯で割って温かくしてから飲み干した。 「あー、眉毛描かなきゃ」  いつも仕事中は、汗をかくため化粧をしていかない。さすがに眉毛は若気の至りでほとんど抜いてしまったために、毎回描いていくはめになった。  コンタクトも入れるのが面倒で、今日は眼鏡でいいやと指紋がついたレンズをそのままにして眼鏡をかけた。  あと10分。  時計をちらちら見ながら寝癖のついた髪は、一度とかしてからまとめて後頭部で団子状に丸めた。ショートヘアならこうはいかない。忘れ物がないかバッグの中を確認し、スマホを開いた。  6時半に目覚ましをセットしたはずなのに、なぜか8時半になっていた。危なかった。入社以来、遅刻をしたことがなかったが、主任が遅刻したとあっては面目丸潰れだ。ギリギリだとしてもよく起きられたと自分を褒めてあげたい。  ラインの通知がきていて、開けば雅臣からだった。 〔おはよう! 今日も朝から仕事だったよね? 頑張ってね。今日仕事終わったら会えるかな?〕  浮気現場を発見した日以来、連絡はまめになり、ほどなくして次はいつ会えるかと催促の連絡がきた。2週間に1度しか会っていなかったはずなのに、旅行から帰って来たであろう次の日には今日会いたいと言われた。そして、それからまだ1週間も経っていないというのに今日のこの内容だ。  これではいつの間にか週2のペースになってしまっている。わかりやすいったらない。茉紀には、振られたら振られたでしょうがないって割り切ればなんて言われたが、今のところ私が振られる様子はなさそうだった。
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