第六章 匿された秘密

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「……永瀬さんて、意外と大胆なんですね…」 口をつぐみ背中に嫌な汗が流れ出すのを感じていると、突然に、そう彼女から言われた。 「大胆…って、何が?」 一体どの辺りまで近野さんが知っているのかもわからなくて、警戒しつつ聞き返すと、 「……見たんですよ、私…」 わざとらしそうに低く声をひそめた。 喉元をせり上がる動揺を押し戻そうと、水をぐっと飲み込んで、「見たって……何を?」平静を装って尋ねた。 「そんなの、決まってるじゃないですか……永瀬さんが、政宗先生とデートしてるところをです…」 「えっ……」 軽い笑いを唇に浮かべたままで言う、目の前の彼女を唖然として見た。 「そんなこと、私……」 否定をしようとするけれどあまりに唐突に確信を突かれたせいで、うまく言葉が口に出せなかった。
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