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「こちらへ……」
背中に手をあてがわれ促されるまま、エントランスまで行くと、
「……愉しめましたよ、昨夜は。……では、また」
と、口角の両端を僅かに引き上げ、マンションの扉の鍵をカチャリと開けた。
「どうぞ、存分に休まれてください。……まだ少し昨日の眠剤も残っているはずですから、よく眠れると思いますよ…」
ドアを開け、私の背を押し出すようにすると、
「また……永瀬 智花さん……」
ドアが閉まる寸前に隙間から覗く顔に薄く微笑を浮かべ、わざとらしげに私の名前をフルネームで呼んで軽く片手を挙げた──。
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