第一章 美形な精神科医

39/44
前へ
/486ページ
次へ
重怠く感じる身体を引きずるようにして家へ帰り着くと、時間をかけてシャワーを浴びた。 そうしてベッドに入りふっと落ち着いた瞬間、一連の出来事が頭に緻密に蘇ってきた。 (……どういうつもりで、あんな……あの人が、私を好きであるはずもないのに……) 『……これからじりじりと、あなたの身体に教え込んでいってあげますから……』 胸に刻み付けられたかのような政宗医師の言葉が、何度も繰り返し浮かんだ。 また……あんなことを、するつもりなんだろうかと思う。 いくら考えても、その言葉どころかされた行為の真意すらも全くわからなくて、 昨夜のことを思い出すと、ただ混乱だけが深まっていくようで、枕に顔をうずめると、 もう私には、もてあそばれ疲れ切った身体を休ませることでしか、自分にけりを付けられなかった……。
/486ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6785人が本棚に入れています
本棚に追加