第三章 囚われた心

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「…ねぇ、私…政宗先生に、アプローチしてみようと思うんだけど……」 受付の合間に真梨奈が声をひそめて、話しかけてきた。 「……どう思う? 智花は…」 「どうって……」 なんて返せばいいのかわからなくて、口をつぐむ。 「……だって、とりあえず誘ってみないと、付き合えるかどうかもわからないでしょ?」 真梨奈が、背後の松原女史に悟られないようひそひそと喋り続ける。 「それは、そうだけど……でも、」 「でも、何よ…?」 完璧に取り繕われた外面の裏には、あんな悪魔のような面を隠している男に、どうせなら近づくべきじゃないと思う。 けれど「でも……」と言ったっきり、その後が出てこなかった。
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