曖昧模糊な誕生日

3/6
前へ
/6ページ
次へ
 ベルトを装着してクールに変身ポーズをとる優哉くんが、この前まではただの童顔の中学生にしか見えなかったのに。  髪を伸ばしはじめたせいか、恋人がいるせいなのか、中性的な 、美少年的なものに見えてしまう。  なんか、困る。  家を出て早めに想いに区切りをつけてよかったなとは思ったけど、やっぱりなんだか、まだ困る。  優哉くんが相方がバイトから帰ってくるから帰るというので、ネオデ◯ケイドライバーを貸してやってアパートの外まで送った。  僕は大量のアルコールを前に、成年早々こんなに飛ばせないと、これらをおすそ分けしようとアパートの共用キッチンに向かった。  とりあえず冷蔵庫に入れておいて、誰かと会ったときにいらないか聞いてみよう。  一本ずつ飲み物を冷蔵庫に突っ込んでいると、キッチンにさっそく誰か来てくれた。  現れたのは、蛇塚くん。  僕の手の中のアルコールを見て、つぶやく。 「あー、不良発見」  いつも僕のことを翻弄する蛇塚くんに、僕はニヤリとした。 「僕ね、今日で二十歳(はたち)だから。余裕でこれ飲んでもいいんだよね」  くやしがって欲しかったんだけど。 「ふーん、おめでとう」  お祝いされてしまった。 「ありがとう」  僕は普通にお礼を返す。  でもそういえば、蛇塚くんも今年二十歳だよね。 「蛇塚くんは誕生日いつなの?」  たずねると、彼はいつも通り、ニヤリとした。 「秘密」 「もう二十歳だったらお酒わけたんだけど、わかんないからやらないからね」  残りのアルコールを全部しまうと、蛇塚くんはその中の一本、梅酒を取り出した。 「これ飲んでよ」  そして蛇塚くんも飲み物を入れに来たようで、冷蔵庫に数本入れると、 「俺はこれ飲むから」  コーラを手にして冷蔵庫を閉めた。 「誕生祝いしよ」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加