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六月十二日。
記念すべき二十歳の誕生日だけれど、普段となんら変わりない夜。
仲間同士では誕生日のたびに集まってお祝いとかしてなくて、気をつかわない程度のプレゼントを数個もらってアパートに帰宅した。
夕飯食べてからプレゼントのひとつ、食玩のプラモを作っているところで、兄から電話の着信。
近くにいるから寄るという。
兄は本当にすぐに到着した。
無表情で部屋に上がりこむと手荷物を置いて、リュックから銀縁伊達眼鏡を取り出し僕に突きつける。
僕が渋々眼鏡をかけると、やっと優哉くんの幼い顔が、笑顔になった。
「隆臣、誕生日おめでとう!」
「ありがとう」
微妙な気分で礼を言う。
「あのさ、いつものこれ、ネタでやってるの? 本気なの?」
眼鏡をかけないと会話もしてくれないとか、ちょっとおかしい。
「本気だったら俺ヤベー奴だろ」
判別つかなかったから十分ヤベー奴なんだけど。
「話しづらかったときにさ、きっかけになったから、なんかね。はい、誕生日プレゼント」
そうなのか、知らなかった。
だいぶおかしいけれど、仲たがいしてたのに仲良くなったのは、確かに眼鏡が要因。
プレゼントらしき手荷物のビニール袋を受け取ると、中にはビールとチューハイとワインと梅酒と日本酒とその他、あらゆるアルコールが入っていた。
優哉くんは大人に全然見えないけれど、酒好きだった。
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