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車を街中のパーキングに停めて、小さなカフェ風レストランに入る。
お洒落なところで、待ち合わせをしているなぁ。
先生の後について、お店の中に入ると、奥の席で立って手を振る人が見えた。
「コウちゃん!!こっちこっちー!!」
先生はゆっくりと、その人へ近づくと、呆れ顔で、
「おまえ、恥ずかしいからやめろよ」と呟く。
え!?
先生のお姉さん!?!?
初めて見る先生のお姉さんは、想像を遥かに超えた、すごく綺麗な人で、驚きを隠せない私。
美人で、おしゃれで、一目見ただけでも、かっこいい大人の女の人の雰囲気が漂っている。
これが先生のお姉さん!?!?
「ほら、紹介しろってうるさいから、連れてきたぞ。おまえはいっつも強引だな。」
そう言って先生は、私の背中をトンと、押した。
「あのっ!初めまして!!島田響です!!」
緊張しながら、お姉さんに向かって頭を下げる。
すると、お姉さんは、椅子から立ち上がったまま、「かわいー!若い!!」と甲高い声を上げた。
その声に、びくっとしてしまう私。
「おまえ、初対面でビビらせんなよ。」
先生が、眉間にシワを寄せて、お姉さんをジロッと睨む。
「あ、そうよね!!彼女可愛いし、若いし、勝手に盛り上がっちゃった!!ごめんねー!はじめましてー!!伊藤あずさです!コウちゃんのお姉さんです!!。」
そう言って、お姉さんはニカッと笑った。
「あのっ!よろしくお願いします!」
なんて言ったらいいかわからずに、頭を下げる私。
そんな私を見て、ふふっと笑うお姉さん。
「そんなに緊張しないでー??。本当に可愛いわね!!本当にコウちゃんの彼女なの!?」
そう言って、お姉さんは先生を見る。
「おまえ、相変わらずうるせぇな。」
先生が呆れた顔で言う。
「なによぉ!!会いたいって前から言ってたのに、コウちゃんってば、ずっと会わせてくれないんだから!!」と、お姉さんは不服そうな顔をして、話を続ける。
「コウちゃんが3年も付き合う彼女ってどんなコか興味あるじゃん!!。想像してた以上に可愛いし、若いし、私、びっくりしちゃった!!」
椅子から立ったまま、お姉さんが先生に詰め寄っている。
なんだか、、、迫力がすごい、、、。
その迫力に圧倒されつつ、棒立ちになっている私。
「恥ずかしいから、とにかく座らないか?」
先生はそう言ってお姉さんを席へと座らせた。
先生と私も、お姉さんを前にして椅子に腰かけた。
「へえー。コウちゃん、こんなかわいい彼女ずーっと隠してたんだぁ。」
そう言って、含みを持たせた笑みを浮かべながら先生の事をジロジロと見るお姉さん。
「なんだよ。うるせぇな。」
お姉さんに絡まれて、先生は、少し照れを隠しながらも、ぶっきらぼうに言い放つ。
先生がいつもと違う表情をしていて、なんだか、違う一面を見ている気分だ。
コウちゃんなんて呼ばれているし、意外すぎて頬が緩む。
「響ちゃんだっけー?」
お姉さんの視線が私に向く。
「あ、はい!」
「コウちゃんに酷いことされてない!?。コウちゃん、冷たいのよ!!昔っから!。人としての優しさが足りないと思わない??。よく3年も付き合ってるわねー!」
お姉さんの言葉に戸惑ってしまう私。
冷たいだなんて、そんな事ないんだけど、、、。
「おまえ、散々な言いようだな。俺はそんなにひどい人間じゃねぇよ。普通だよ、普通。」
先生は淡々とメニューを見ながら答える。
私も苦笑しながら「優しいです。」と、答える。
すると、「ほら。俺は優しいんだって。」と、先生はぶっきらぼうに、お姉さんに向かって言う。
お姉さんの前では、先生、子供っぽくみえるなぁ。
お姉さんの前では弟らしい先生を見て、頬がまた緩んだ。
「いーから、早く頼めよ。」
お姉さんにいじられて、少し不機嫌そうな先生。
だけど、何も逆らえない雰囲気だ。
「そーゆー所が冷たいって言ってんの!」
お姉さんは、先生の言葉も、スパッと遮る力がある。
先生に強く言えるのも、お姉さんだからなんだろうなぁ。
兄弟喧嘩を見ているようで、なんだか微笑ましい。
言い合いしていても、仲が良いように見えるから不思議だ。
「仲いいんだね。」
私がそう言うと、「よくねぇよ」と先生は即答する。
だけど、本音で言い合う姿を見ていると、仲が良い姉弟に見える。
運ばれてきたオムライスを食べながら、お姉さんが口を開いた。
「若いからもっと、チャラチャラしてるのかと思ってたけど、全然違うじゃん。」
「なんだよ、チャラチャラって。おまえの勝手な想像だろ、それ。」
ふてぶてしく答える先生。
「今時の子はそういう子多いじゃない!でも、響ちゃん、純粋そう!!いい子で安心したわ!」
お姉さんはそう言ってニカッと笑った。
「そー。そりゃよかったな。」
運ばれてきたパスタを食べながら、お姉さんに心無い返事をする先生。
「こんな可愛い妹ができるなんて、お姉さん嬉しいわー!」
「あー、そりゃ、よかったな。」
「もう!本当冷たいわね!」
先生の冷たい返答も上手く交わすお姉さん。
すごく息が合っている。
こんな会話も、温かく感じるのは、やっぱり、相手の事をよく知っているからなんだろうな。
妹なんて言うお姉さんの言葉に、少し恥ずかしい気持ちになりながら、2人の会話を聞いていた。
「で、いつ結婚すんの??」
急にお姉さんが結婚という言葉を出す。
え!!!
「もちろん、するんでしょ?。3年も付き合ってるんだし。こんな良い子逃したら次は絶対に無いわよ!コウちゃん!」
ノリノリな雰囲気で先生に詰め寄るお姉さん。
「おまえなぁ。初対面でそれ聞くか、普通。」
先生は呆れ顔だ。
「だって、本当の妹になるかもしれないじゃない!?そう考えたら、楽しみだしさぁ!」
「おまえの楽しみの為に結婚すんのか、俺は。」
そんな2人のやり取りを聞いていて、赤面してしまう私。
結婚て、、、。
そうか、結婚したら、お姉さんは本当のお姉さんになるのか。
想像しただけでもドキドキしてしまう。
「するなら早くしちゃえばいーじゃん。お母さんも心配してたわよ。コウちゃん、いい人いないのかしらって。」
「それはおまえだろ。もういい年なんだから、順番から行けば、おまえが先だろ。」
先生がそう言うと、お姉さんも、「まぁ、そうだけど。」と、口を尖らせながら答えた。
「早くしねぇと、彼氏に逃げられるぞ。」
そう言って先生が笑っている。
「失礼ね!こっちは、ちゃんと考えてるわよ!!」と、少し怒った口調で先生に言い返すお姉さん。
「へぇ。」とお姉さんの言葉に、含み笑いをする先生。
先生、お母さんに心配されてるんだ、、、。
そうなんだ。
2人の会話を聞き入ってしまう。
お姉さん、結婚するのかなぁ??
先生は、お姉さんの言葉を信用していない素ぶりだけど、、、どうなんだろう?。
先生はこの話題から、早く逃れたいようで、、、。
「まぁ、こいつも就職決まったばっかりだからな。変に焦らすような事言うなよ。」
と、お姉さんを突き放したんだけれど、、、。
「そっか!これから社会人なんだ!!じゃあ、これから違う出会いがあるかも!!。響ちゃん、若いし可愛いから、コウちゃんより素敵な人と出会うかもしれないわね!!。」
と、お姉さんは先生を横目にして、勝ち誇ったように言う。
「また、おまえは、、、。」
苦い表情をする先生。
先生とお姉さんの会話を聞いていると、お姉さんの方が、やっぱり上手だ。
先生がうまく操られているように見える。
なんだかんだ言って、お姉さんには頭が上がらないみたい。
そんな2人のやり取りを見ていると、なんだか楽しい。
「コウちゃん、家帰った?最近。」
お姉さんが聞く。
「いや、帰ってねぇな。色々忙しくてな。」
ご飯を食べ終えて、先生はタバコを吸いながらお姉さんに答える。
「私、この前ダーリン連れて帰ったのよ。お母さん、コウちゃんの顔見たいって言ってたわよ。お父さんも、あいつは何してるんだって言ってたし。たまには帰って顔見せたら?」
お姉さんは彼氏を連れて先日、ご両親の住む家に帰ったらしく、先生にも帰るように促している。
「まあ、そのうちな。遠くてな。運転するのもめんどくせぇしな。」
そう言って、めんどくさそうな顔をする先生。
そっか、本当に帰ってないんだなぁ。
長距離を一人で運転するのも、確かに大変だろうしなぁ。
免許、、、とろうかなぁ。
ふと、頭の中に免許という言葉が浮かんだ。
前に、車の免許を取ろうかな、なんて、少し考えたことがあった。
でも、運転する事がこの先あるのかと考えた時、その時はそんなに必要性を感じなくて、結局、行動には移さずに終わった。
でも、もし、私が免許を取ったら、、、。
2人で運転したら、先生が家に帰るのも少し楽になるかもしれないなぁ。
先生のお母さんやお父さんの心配事も減るかもしれない。
そんな事をふと考えていると、先生が口を開いた。
「もうすぐ20歳なんだよ、こいつ。」
「えー!そうなのー??。誕生日いつ??」
お姉さんが甲高い声で、聞いてくる。
「あ、、来週末です。」
そう私が答えると、「ほんとにもうすぐじゃない!」と、お姉さんは目を丸くした。
そして、お姉さんは急に思いついたかのように、突然私に向かって言ったんだ。
「よし!お姉さんが誕生日プレゼント買ってあげる!!」
「え!?!?」
困りながら先生の顔を見るけれど、「いーんじゃねえ?買ってもらえば。」と先生は淡々と言っている。
え!!!
いーんじゃねえ、、って、、、。
よくないよ!!
「そんな!悪いです!!」
「いーの!いーの!!可愛い妹の誕生日なんだから!!お姉さんに任せて!!」
そんな!!
誕生日プレゼントなんて!
初めて会ったのに、そんな急に、、、!
悪いよ!!
「これから街で買い物しようと思ってたの!響ちゃん、付き合って??」
「え!?!?」
急な誘いにびっくりしてしまう。
「そんな!悪いです!」
そう言って断ろうとしていると、隣で先生は苦笑いをしている。
「行ってくれば?姉ちゃん、言い出したら聞かねぇから。俺、本屋でもぷらっとしてくるわ。」と言って、先生からも放置されつつある私。
お姉さんの性格をよくわかっている口ぶりだ。
そうか、、、こういう事か。
言いだしたら聞かないとは、言ってはいたけれど、、、。
こんなオシャレでかっこいい大人な女性と買い物なんて、、、。
しかも、先生のお姉さんとだなんて、、、。
そんなの、私にはハードルが高すぎる!!
でも、せっかく誘ってくれたお姉さんの気持ちに応えたいとも思うし、、、。
これ以上断り続けるのも限界にきていて、、、。
申し訳ないと思いつつ、お姉さんからの誘いを受け入れた私。
この後、2人で買い物に行くことになったんだけれど、、、。
先生のお姉さん、、、。
先生の事をよく知っていて、先生の一番身近な人だ。
そんな人と2人で買い物だなんて。
どうなることやら、、、。
不安な気持ちを抱えながら、私たち3人は、カフェを出た。
「コウちゃん、ゆーっくり本見てていいからね!。女同士楽しんでくるから!!」
お姉さんは、早く行けと言わんばかりに、先生を追いやろうとしている。
「、、、わかったよ。あとは2人でうまいことやってくれ。じゃあ、また後でな。」
戸惑う私と、ウキウキなお姉さんを残して、先生は足早に本屋の方へと向かって歩いて行く。
、、、そんなぁ、、、。
お姉さんは楽しそうに、「じゃぁ行こう!」と、私の腕を掴んで歩き出した。
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