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翌日から調査が始まった。
前原学。40歳。
見た目は勤勉なサラリーマンで、体型はやや細身。髪も黒で、短くカットされていた。イメージを言葉で例えるなら、真面目。
現在は建築会社に勤めていて、社寮に住んでいる。週5勤務をこなし、毎朝8:00~17:00までが現場仕事。
終わったら近くのタイヤショップ、コンビニと、日替わりで夜の10時までバイト。その後、安くて評判の古い大衆食堂に寄り、社寮に帰る。
「前原? ああ、1年前くらいから、ウチで働いてるね」
答えてくれたのは、現場の監督と呼ばれる男だった。
「どんな感じの人です?」
「どうって、マジメだよ。クソ真面目だね。真面目が悪いってことはないけどさ、バクチもタバコも女も、コレもやらねえんだわ」
監督が握った手を、口元に持っていく仕草をした。酒も飲まないってことか。
「探偵さん。あいつ、何かしたの? 借金取りに追われてるとか?」
監督は興味半分、探り半分の面持ちで聞いてきた。
「いえ。ぼくはただ、頼まれた調査をしているだけなので……」
守秘義務があるから、知ってても教えられないけどね。
「まあいいんだけど、ウチもほら、結構ワケありな奴が多いから、詮索はしねえけど、追われてるなら助けてやりたくてさ」
嘘は言っていないようだ。見た目は怖いけど、いい監督さんなんだな。
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