6人が本棚に入れています
本棚に追加
それは、些細と言えば、些細なことだったかもしれない。部活で仲良くしていた子が、朱美の悪い噂を立てたのだ。
──あの子が、私の悪い噂を立てて言いふらしているの。
とんでもない嘘だった。朱美は悪口を言った記憶がない。和香とは仲がよかったし、和香には我が儘なところもあったが、朱美は誰にも文句の一つも言ったことがない。
それなのに、和香は、朱美を的にしてきた。
理由は朱美にも、わからなからない。
とりあえず、そう言われたからには、朱美も腹が立った。今まで、我が儘を聞いてきたのに、なんでそんなことを言われないとならないのか。
朱美にとって、不可解で、難解で、頭を捻った。
そんなとき事件が起こる。昨日、部活をしているときに朱美は他の部員とラリーをしていた。
ストレートに打って、クロスに打って、何故か調子がよくて、面白いように狙い通りにストロークを打てた。楽しくなって、夢中になったところで──背後からボールが飛んできて、彼女の背中に当たった。
「いっ……」
普通に痛い。投げられたわけじゃない。ラケットを使って打たれたボールだった。背中にヒリヒリしたものを背負いながら、朱美は振り返った。
ラケットで顔を隠しながらクスクス笑っている和香と、もう一人の部員だった。
最初のコメントを投稿しよう!