便利な掃除機

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 体を揺すぶられて目を覚ますと、博士が青い顔をして立っていた。 「おい、ワシの発明品が無いぞ」 「え? そんなバカな」 「玄関のドアが開いていたから、泥棒に入られたのかもしれない」 「私はちゃんと鍵をかけましたよ」  二人は慌てて研究室に行った。  研究室はガランとしていた。  一切合切何もない。 「変ですよ博士。こんな何もかも持って行くなんて」 「だが、実際に無くなっているではないか」  助手はふと、掃除機のリモコンが残されているのを見つけた。 「ひょっとして博士……。掃除機の仕業かもしれません」 「何だと?」 「昨日、ゴミの種別を無差別にしたんです。だから、部屋中のゴミと思しきものを全て掃除したのかも……」 「ワシの発明品がゴミだと!?」 「私のせいではないです。掃除機の判断です。でも、それならリモコンだけが残されたのも説明がつきます」 「では、肝心の掃除機はどこへ行ったのだ?」 「……分かりません」  助手は何か手掛かりはないかと、リモコンを確認した。 「ああっ!!」 「どうした?」  答える代わりに助手はリモコンを博士の方に差し出した。それを受け取った博士は目を丸くした。 「範囲が二十キロメートルになっているじゃないか!!」 「どうやら眠たくて設定を間違えたようです」 「玄関を開けて出て行ったのは掃除機自身だったのか。あれには段差も障害も関係ないからな……」 「……すみません。でも、掃除が終わるかゴミがいっぱいになれば、戻ってきますよね」 「あれはゴミがいっぱいにならない掃除機なのだ。中に別次元への転移装置が組み込んであるからな」 「え、すると吸い込まれたごみはどうなるのですか?」 「この世界から完全に無くなってしまうのだ」 「そんな恐ろしい物だったのですか……」 「だからあれほど気をつけろと言ったじゃないか」 「すみません……」  反省している助手の姿を見て、博士もそれ以上は言えなかった。 「うーむ。騒ぎが起きる前になんとかせねば……」  博士は状況を確認しようと、研究室にあるテレビのスイッチを入れた。  真っ青な顔をしたレポーターが何かを大声で喋っているところだった。  
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