1970年3月 京都

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 島田の鬢の髪に白塗り化粧。目元に紅。素顔を知れば知るほど彼女の芸妓姿の美しさと品も際立つ。  姫扇を見る武は愛しげに目を細めた。どちらからともなく、手を重ね合っていた。 「うちは、武はんと京都の桜が見たいどす」  姫扇の、ぽろりと零した本音に武の手が反応した。誰にも気付かれずに握る手に微かな力が込められていた。 「姫花」  周りを憚る小さな声だった。姫扇は武を見上げる。 「次の休みは」 「明後日どす。武はんは、いつまで京都にいらしはりますの?」 「明後日東京に戻る予定だったが、一日伸ばそう。明後日、君のマンションに迎えに行くよ」  姫扇の表情がぱあっと明るくなった。
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