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あまりにも分かりやすい、まるで恋をする少女のような表情に武は苦笑いした。
「芸妓が客にそんな表情を見せてはいけないだろう。芸妓姫扇は営業用の表情がちゃんと出来るのか心配になるな」
姫扇は拗ねたような表情を見せた。
「武はん、イケズどす。誰にでもこないな顔見せると思てはりますのん」
武はお猪口を持ったまま、ハハハと笑った。武が珍しく声を出して笑った事に嬉しくなり、姫扇も口元を隠しながら笑う。
「何処の桜を見に行こうかな」
「そうどすね……鴨川の桜なら、ゆっくり歩きながら見られますえ」
「ああ、それもいいな」
うちは、と姫扇は武の横顔を見ながら思う。
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