御幸右京という男

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 という事は。  星児はタバコをサイドテーブルの灰皿で消しながら続けた。 「みちるの父親が山梨に引っ込んだのは、みちるが生まれる前か、みちるが生まれて直ぐだな。 コイツが物心ついたときにはもう親戚縁者のいない環境が出来上がっていたんだろう」  星児は眠るみちるの手をそっと取り、口づけをする。静かに見守る保が呟くように言う。 「それでもみちるは幸せだったんだろうな。 父親がいて、母親がいて、愛されて」  時折みちるが話す、断片的ではあるが彼女の中に残る幼い日の思い出には親の愛が溢れている。 「それは俺達だって同じだよな」
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