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さて、ガイドブックの4番目は…?
「ヒルトン・ハワイアンビレッジの花火…?」
やはりこのガイドブックは観光と言うものを理解していない…。
…まぁ、リスには花火くらいが丁度良いかもだが。
「タッドル人には少し刺激的かも知れないが、良いかリス?」
「ウー?」
「良いよなリス♪」
「ウー☆」
ヒルトン・ハワイアンビレッジの花火大会は毎週金曜の19:45から行われているらしい。
まず僕らの世界じゃ有り得ない話だわな。
「…おー。」
「ウー☆☆」
ガイドブックに載るくらいだからもっと過激なのを想像してたが、想像に反して花火はイルミネーションのように静かで、しかし煌びやかなものだった。
…まだまだ序の口と言ったところだろうか?
「…アイスとかき氷持って来てて良かったな。」
「風情があるね〜☆」
「ウーー☆」
…おっと、花火が激しさを増して来た♪
先程とは打って変わって、ひゅーと音を立てて天空に上り次々と大輪の花が咲く。
色合いもグリーン、レッド、パープル、ピンクと日本では見ないようなそれだ。
「…おっ。」
何花火と言うのか知らんが、百合の花のように偏った咲き方をする花火が上がる。
やがて、これぞ花火大会のフィナーレと言わんばかりに次々花火が咲いては消える。
「…終わってみるとあっと言う間だったな。」
「5分くらいだからね。日本にももっと大規模な花火大会は幾らでもあると思うけど幻想的な時間だったね☆」
「…ぁあ、そうだな。」
「ウー☆」
何も映さなくなった夜空を見上げ、余韻に浸るようにレモンスカッシュを飲む僕だった。
ガイドブックの5番目は…
「ロイヤル・ハワイアン・ホテル…」
最早何も言うまい。
ヤシの木の向こうにいきなり砂のようなピンク色の、城のような建物が現れた。
「…なぁ、このホテルお前ん家で見ようぜ?」
「え?良いけど…ちょっと待っててデータを…」
「ウーー☆」
リスを抱き、ジェットで皇家へ。
「こら、尻尾を振るな。前が見えない。墜落するぞ。」
「ウッ♪」
…仕切り直してホテルの外観から映像を再生する。
…遠くから見るとただ派手だったピンクも、植物達の緑が加わると色調が取れて来るな。
「さて、ロビーはっと…」
ロビーに入ると、白を基調とした広いロビーに高級感のある家具が並んでいた。流石にロイヤルだな、うん。だからってガイドブックにオススメするのはどうかと思うのだが。庶民的に考えて。
ロビーで仕事をしているモブに英語で話し掛け、仮想チェックインを済ませ、映像は一気にホテルの最上階へと飛んだ。
「ウーー☆」
日本のホテルと変わらないような廊下を(2、3歩)歩き、部屋に入る。
中はシングルベッドが2つのスタンダードな部屋だった。
問答無用でベッドにダイブする。勿論実際は皇のベッドだが、ワルキューレは発汗もしなければ抜け毛も無いから新品同様だ。
「ウー☆」
「ふふっ☆」
僕の真似をしてリスが仮想のベッドにダイブする。
すると不思議なことにリスは仮想のベッドの上に着地したでは無いか。…どうやら皇が何か手を打ったらしい。
…ほっと息を吐き、体の力を抜く。…やっぱ観光の後はこれだよなぁ。
「ウッ?ウッ?」
ベッドダイブから僅か30秒。リスが起き上がり室内を物色し始めた。…やれやれだぜ。ふぅ…
映像を切り替えると窓の外にワイキキビーチを見下ろす部屋になった。
「…絶景と言う他無いな。ブルーハワイが誕生する訳だわ。」
白い砂浜に水色の水。日本の海と何が違ったらこんな色になるのだろうか?って感じだ。実に美しい。
「ほれ見ろリス。この絶景を楽しむ余裕を持ってこそ“大人”と言うものだぞ?」
リスを抱っこし、下界のビーチを見せる。
「ウー…?ジャブジャブ…」
何処で覚えて来たんだ平泳ぎなんて。
「折角だから水中の景色も見てみようよ☆」
「…まぁそれも良いか。」
「そもそも“ワイキキ”ってのはハワイ語で“水が湧く”と言った意味合いなんだよ☆」
「…へー。」
「おっ☆良いものがあるね。“ワイキキビーチ潜水艦ツアー”だって♪」
「…本当何でもアリだなハワイ。」
「センスイ、カンー?」
「困ったな…潜水艦の説明はまた今度ね☆」
「ウー…」
「見ろ。この“海”の色を。今からここに潜るんだ。」
「ウッ☆☆」
「あれは…沈没船か。…今度は飛行機?」
意外と言うか海底は汚いんだな…何の為のツアーなんだ。掃除くらいしろよ。
「ウー♪♪♪」
そんな僕を余所に、リスは次から次へとやって来る魚の群れに大興奮だ。…この前も見ただろうに。
「ボク、お魚さんにはあんまり詳しくないんだよね…ガイド出来ないなぁ…」
「あんだけ喜んでりゃガイドなんてリスの耳に念仏だろ。」
「ショック…」
何でだよ。
「しかしまぁ、水族館とは違った味わいだな?」
巾着袋を取り出し、擬似ソフトクリームを味わう。
野生と養殖の違いみたいなもんだろうか?
「楽しんで戴けて何よりだよ…☆」
「(ハワイ旅行)企画したの僕だからな?」
「はい…(T_T)」
…いよいよハワイ観光も最後、ワイキキビーチを残すところとなった。
皇の魔法の檜の木で作ったビーチチェアで3人でワイキキビーチを堪能する。
周囲には影のような無数のヤシの木。海の向こうには沈んで行く夕日。
…そして海側には無数のビーチパラソルと水着の群れ。
「ウー…?」
「ごほっ!」
おもむろに服を脱ごうとするリスに思わずむせる。
「おい待てぇっ!お前は着てろ!!」
「ウー…」
「うーじゃない。全く、VRが脱いでるからって服を脱ぐ奴があるか…」
「あはは…♪」
「あははじゃねぇぞ。」
「じゃあ今日一のお楽しみを頼む。」
「はーい☆」
そう言ってエアコンを操作する皇。さぁお楽しみの始まりだ…☆
「ウ?ウー…☆」
「…。」
何やらうずうずしている様子の皇。
「解説どーぞ。」
「はーい☆」
「ハワイの気温は年間を通して24~30℃。夏場に限っていえば、実は日本の方が気温は高いんだよね。」
「快適な温度だな。湿度も低く心地良い日差しと言える。」
…何でこの人は何を言っても偉そうなんだろう?…まぁいっか。
「トロピカルなジュースも用意してあるからね〜☆」
「ウー☆」
「おー。」
──ハワイ観光を終え、時間帯的には昼食だが夜食のつもりで食事を味わう。
膳に乗せられたお茶碗に入った白米。皿に盛られた豚カツとエビフライと思しき揚げ物。
皇曰く決してハワイ料理を作れない訳では無いが皇も僕も日本出身だし和食の方が馴染みがあるだろうと、現地の店の情報から和食を提供してるメニューを再現したって訳だ。
こいつの料理の多彩さと和食の美味さには定評を付けてる身だが…豚カツにエビフライって和食なのだろうか。
「ウー☆☆」
「豚カツ擬きは美味いが…これエビフライか?」
「そりゃ事前準備無しで作ったんだもの…擬き料理しか作れないよ。」
「ウー…オイシクナイー?」
「美味いこた美味いが、エビ特有のプリプリ感が足りない。」
「プリプリー?」
「善処します…」
「うむ。」
こうしてビーチの夜景を楽しみながらの食事は終わったのだった。
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