序章『パンは投げられた』

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「…らぁあああっ!」 背の高い魔物を見付けては踏み台にして、ジャンプ攻撃で魔物共を蹴散らして行く王子。テンション高いなぁ… 「皇!風だァ!」 「…うん!せぇえいっ!!」 大槍を振り回して風で魔物を足止め、或いは吹き飛ばす。飛ばされた魔物は勿論王子の元へ。 「オラァアアッ!」 「えぇっ!?」 ムーンアックスのムーン部分を取り外して…投げたっ!? 「フッ!」 王子が指をパチンと鳴らすと、三日月と謎惑星が衝突し、ブラックホールが発生…吸い込まれた魔物が次々とキューブになって行く…。 「す、凄い…」 同じ魔法使いとは思えない…。 「まだまだぁっ!ふっ!はぁっ!おらおらおらおらおらおらおらおらぁぁあっ!」 ムーンアックス(復元した)を振り回し、地中から人間大の白百合の花を咲かせ、マシンガンのように種を連射している… 「はぁあっ!」 …また地中から出て来たのは…ササガニユリかな? 「うぉおらぁあああっ!!!」 「…」 ササガニユリはその名の通り、蜘蛛の足…或いは蛸のような、触手に近い形状の花弁が生えた…ヒガンバナの仲間の白い花だ。 一般的には、スパイダーリリィと言う名前の方が有名かな?(ササガニって蜘蛛のことだから、同じ意味なんだけどね。) …その花弁を鞭のように使って王子は魔物を次々と粉砕している…。えー…なんかぐろい…。 「…ふー…。」 大分エネルギーを消費したのだろう、王子が座り込む。 「相変わらず凄いね王子は…。」 「だろ?」 「…ぁはは…♪」 王子は“ワルキューレ”の体になったことで生前よりも技が増えたらしい。…けどボクは…寧ろ減ってるんだよねぇ…はぁ。 大抵のワルキューレは生前の適正に関係無く攻撃魔法や回復魔法を扱えるそうだけど…。 ──ボクは相変わらず、攻撃魔法の1つも習得出来ないままだ…。 「…じゃあ、残りはボクが。王子は下がってて?」 「へいへい。…よっと。」 王子が少し離れたウッドロックに跳び移り、そこに座る。 「すー…はぁあああああ……!」 息を吸い、目を閉じて“超能力”を発動させる。 念力で強化された声が地面を削り、魔物の足を鈍らせる。 「…ふっ!」 全長3mものランスを振り上げ、軸足で大地を踏み締め…!…て魔物を全滅させてしまった…。よ…予備動作だけで…。 「…ぁ。」 この技はボクのあらゆる力を念力で強化すると言う、弱体化したスペックを補強する為の技なのだけど…。 ちょっと動いただけで“衝撃波”が発生してしまうのでちょっと使いづらいんだよなぁ…。 「…あっはっははははは!♪」 王子が決め技を出しそびれたボクを見て笑い転げている…まぁ、面白かったなら結果オーライかなぁ…ちょっと悔しいけど。 …残りは500匹だったのがたったの3匹に。 「…はぁー…。」 仕方無く溜め息で魔物を全滅させるボクだった…。
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