14人が本棚に入れています
本棚に追加
──TC8G15。
第一地球公園にて。
…昨日のライブの所為か否か、公園には敷地の外まで行列が出来ていた…。
僕とリスとミエルは今日ここに来るよう皇に言われていたのだ。
「ウ〜?」「ルフ〜♪」
…さて、今日は何だろな♪
関係者特権ぐらいあるだろと、行列など気に留めずずんずん進んで行く。
「ねぇねぇお兄さん。」
「あ?」
行列に並んでいるガキに話し掛けられた。
「あなたワルキューレでしょ?」
「まぁな。」
「じゃあさ、“小麦粉祭り”って何か知ってる?」
「…いや、知らない。」
「え〜…」
ガキを置き去り更に進んで行く。
…そうかぁ、今日は小麦粉祭りかぁ…そういやそんなやりとりも小麦作りもしたっけか。
「…あ♪こっちこっち〜♪
…すみません、予約のお客様が来たので少々お待ち戴くことになります。」
接客をしながら、王子、リズ、ミエルの3人に手を振る。
今日のイベントはその名も小麦粉祭り!!☆
…タッドルには“祭り”に相当する言葉が無い為、現地の人に説明するのは相当苦労した。…けど、苦労の甲斐もあって既に30人もお客さんが来てくれた。
…その内6割はワルキューレだけど。
「美味しいよ美味しいよ〜!どれもとっても美味しい地球の料理だよ〜!」
呼び込みをしてくれるのはミルフィーユさん。名付け親が地球出身のワルキューレだとかで、ワルキューレにも現地の人にも明るい頼りになる人脈だ。
…因みにミルフィーユさんの本職は地球人向けのアクセサリー屋さんだったりする。
つまりは客を沢山集めると言う名目のギブアンドテイクだね…♪
「たらこ風スパゲティ1つ。」
「はいお待ち☆って王子、来てくれたんだね…♪」
てっきり来ないかと思った。
「…まぁな。この星でロクな料理が食べれると来ればてこでも動くさ。」
「あははは…♪」
「ウー!?」
「あ、おはようリズ☆何食べる?
と言っても3択なんだけどね…♪」
流石に騎士団から人員を借りることは出来なかった。…マラクさんや知人のワルキューレも、料理の得意な人が集まらなかったので調理係がボク1人なのだ…
「ピザとクロワッサンで良いだろ。シェアしようぜリス。」
「シュワッ?」
「シェアな。」
「あはは♪召し上がれっ…☆」
「…いただきます。」
『イタダキマースッ♪』
テラスは埋まっていたので、仕方無くシーソーの両下端にルリーアで固定用の石を作り、ベンチ代わりにして3人で座る。
「ウッ!?」「ルフー!?」
ピザとクロワッサンを1口食べて驚愕に開いた口が塞がらない2人。…フ♪ガキ共には禁断の味だったかな?
…さて、たら(風)スパが冷えない内に食べてしまおう。
「ん…(もぐもぐ)」
美味い。スパゲティは完全にアルデンテまで再現出来てるし、たらこ風の何かも申し分ない。思わず完食してしまいそうになる。
「ウー♪」「ルフー♪♪」
「…お前ら、シェアだってことを忘れてないか?ほら、ピザかクロワッサン寄越せ。」
「ウー!」
やらないぞと言うようにクロワッサンを庇うリス。ほんとパン好きだなこいつ。
「ほら、スパゲティも美味いぞ?」
「…。」
何だかんだでリスからクロワッサンを受け取り、ぼーっと祭りの場を眺める。
「ウーー?ジュルリ。」
──こんなに美味しいのに食べないの?とか、そんなとこだろう。勘だがな。
「…ぁあ、こうして見てるとまるで地球の“祭り”みたいだなってさ。」
「マツ、リー?」
まるで何を考えてるか分からなかったが…今は少し分かる気がする。
奴は地球を…否、自分の知り得る限りの“楽園”をここに創り出そうとしているのだろう。
「ちっ…」
図らずも目的は一緒ってことかよ。これだから気持ち悪いんだよなぁあの男装女は!!
「ウー♪」「ルフフ〜♪」
リス達はピザとたらスパにすっかり夢中になって尻尾を振っている…おいおい、シェアだってこと忘れてそうだな。…まぁ良いか。
再び関係者特権を行使し、行列を迂回し皇の元へ。
「おい、同じのおかわり。」
「おかわり!?
…ぁあ、うん♪今受けてる注文が先になるけど良いかな?☆」
「何だ…」
「露骨にがっかりしないの☆(はいお待ち遠様♪)」
「…ふむ。」
──折角だから調理の工程を見て行くか。もしかしたら自分でも作れるかも知れないしな。
「ふっ…!」
大量の小麦粉が勝手に塊になり、ぐにゃぐにゃと捏ねられているようにうねったかと思うと回転し、段々と円盤状になって行った。
──うん、無理だなこりゃ!
並行調理で作っていたピザソースとチーズ風の何かとベーコン的な何かと、これまた並行調理で用意したクロワッサンを窯に入れる。すると自動ドアのように釜が閉じた。
「…つか、ピザ窯まで作ったのかよ。」
「うん☆結構酸素パックを使ってるからまた魔物を狩って補充しないとだねー…
王子、良かったら炎魔法要員として手伝ってくれな「断る。」「早!?」
言いながら、何時の間にか捏ねていたスパゲティにソースを絡めて行く皇。…最早これだけで演し物になってるだろ。
「へいお待ち☆」
「何で大将風なんだよ。」
…まぁ、ぶっちゃけこの店の大将と呼んで良さそうだが。調理器具も全て構築魔法で作ってるらしいし。
「…どうも。じゃあな。」
「毎度あり〜☆」
──やがて、満腹になった為することも無くなり、成り行きでさっき拒否ったばかりの料理要員の業務をすることになった。
「ウーー♪」
尻尾をフリフリして釜に齧りつくようにして見張るリス。
…一体何をやってるんだろうか僕達は?異世界まで来て。
…ぁあでも良い匂いがしやがるなぁ…これで良いか。
「…さて、残り50人、ちゃちゃっと捌くとするか。」
見た感じ公園にはそれだけの人数が集まっているようだった。
…そして、皇の用意した小麦粉はそれぞれ3種の料理100人前分って訳だ。馬鹿か、…まぁ、数は多ければ多い程燃えて来るけどな♪
「いやー♪王子が手伝ってくれれば百人力だね☆」
「ほざけ。」
「ほざけって…」
何で他人の為に料理を作ってんだ、って話だ。
…まぁ良い。メンバー紹介だ。
生地係、皇。調理係、僕。トス係、ミエル。釜係、リス。
…まぁ、皇が数トン(いやキロガンプの上は“タンク”だったか)はあろうかと言う小麦粉を捏ねて生地にし、それを僕が調理して、窯に火を灯す。
そして、ミエルがクロワッサンとピザを窯にinし、窯の中をリスがゴーグルで監視すると言った具合だ。
…そして、集客、接客、配膳をミルフィーユさんって現地住民が担当してくれている。
…ってか、ミルフィーユって物凄いキラキラネームだな…(まぁ、名前で人のことは言えないのだが。)
しかし、僕目当てで客が来てるなら兎も角、何で僕がこんなことやってるんだろうな、全く…♪
最初のコメントを投稿しよう!