終章『瑠璃色の空を見上げて(前編)』

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──TC8G16。 今日僕はRF27地区にやって来ていた…。 何でも、この星の衣服等の材料となる羊のような生物がいるとかでその毛刈りに出掛けることにしたのだ。 名目上は素材回収任務だが、実質的にはリスのクラフトワークの為の素材集めだ。 昨日の作業を見てれば分かる。リスは何かを“作る”ことに何か拘りのようなものを抱いている。 …そして、リスの為ならどんな労力も惜しまない。それが今の僕だ。 「じゃあマラク、素材発見は頼んだぜ?」 「お、おう…」 「何だよ」 「いや、お前さん変わったなーって…」 「は?」 「前は他人を信頼したり、間違っても“頼んだぜ”なんて言葉が出たりはしなかっただろ?」 「…そうだったかな。」 「そうだよ!な?この数ヶ月にあったこととか話してみないか?」 「断る。」 「そーゆーとこは変わってないのな…」 「ぁあ?」 ──僕が変わったかどうかは別として、僕の待遇は変わらない。白百合 皇と出撃しない限りは手枷を付けての出撃。 …クソだりぃことこの上無い。 が、それでもやり甲斐のようなものを感じている辺り、本当に変わったのかも知れない。…何てな♪ タッドル羊こと“エスティマーク”は弱肉強食のRF地区にて、獅子の如く気高く生き残っている生物らしい。 今回に限りルリーアの使用制限も解除されていることを見ると相当な強敵ってとこだな。ふん、腕が鳴るな。 「いたぞ、エスティマークだ。」 「ん?」 「奴は見掛けに似合わず凶暴だ。気を付けろよ。まずは“血抜き”で抵抗出来なくしてやれ。胃を狙うんだ。」 「胃ねぇ…あむ。」 ルリーアでナイフを作り、足で口元まで蹴り上げる。 「にょっと(よっと)。」 移動するエスティマークの前に降り立ち、立ちはだかる。 武器は口に咥えるもんじゃないな。…て言うか、ワルキューレも口から発声してんだな。 「にゃっ(しゃっ)!おるぁああああっ!」 「メメメ〜!!」 間抜けな鳴き声で隕石のような岩塊を複数振らせて来るエスティマーク。だが僕は大回転をするだけで全て躱し、エスティマークの懐に潜り込む。 「にゃあっ(しゃあっ)!!」 「メッ…」 大量の青い血が漏れ出し、弱々しく地に伏すエスティマーク。 「よし、ここからは俺に任せな。」 「にゃあ(ああ)。」 漸く口が自由になった。序でにマラクの作業を見学することに。 「ふっ…!」 空気からワイヤーを錬成し、四肢と傷痕の止血を兼ねるように2回縛るマラク。 「よしじゃあ行くか…って重!?良くこんなの一撃て仕留めたな!?」 「ああ。すげーだろ♪」 「凄いって言うか化け物染みてるって言うか…」 ──結局マラクがエスティマークを担ぎ、その後ろから支えてやるような形でテントまで戻ったのだった。── タクロン6、エマール家にて。 「メメメ~!!」 「ウー!?」 「こら動くな。殺しはしないから。」 「じゃあちょっとごめんね…ふっ。」 皇が構築魔法で足枷を作り身動きを封じる。 「で?毛刈りはどっちがやる?」 「僕だ。」 「どうぞどうぞ♪」 面倒だけど。リスに格好良い僕を見せたいってのがあるのかも知れない。 バリカンは普通にPRUNPS地区で売っていた。 「リス、このふさふさ具合しっかり目に焼き付けたか?」 「ウー♪」 「じゃあ、行くぞ。」 ぶぉーんと音を立ててバリカンが振動を始める。振動が手に響くので手の感覚をオフにする。 「ウ…ウッ…ウー!?」 劇的ビフォーアフター。鋏も使って3cmにまで切り揃えたエスティマーク。その姿はさながらバイソンのようだった。 「メ〜。」 何だその眠くなるような鳴き声は。 「ウー!カッコヨクナッター!」 「そうだろそうだろ♪」 「皇。この毛を1本化か纏めて毛玉にしろ。」 「ラジャー☆」 「ウー?」 「メ?」 「お前は用済みだ。森…じゃないな岩場に帰れ。」 帰れと言うか僕が野に放つんだけどな。 「ウー…ミエル、ピョンヒャ、ポンファ。ウー♪」 「ああ、ミエルは動物をペットにしてたな。」 2匹は同じ種族らしかったから、ピョンヒャとポンファと言うのは名前なのだろう。変な名前。(僕が言えたことでは無いが。) 「ウー…エスティマ?アソブー♪♪」 「は?こんな可愛くも何とも無い奴と?」 「ボクは可愛いと思うけどな〜」 「お前の意見は求めん。」 「…そうだな。やったこと無いし、ロデオでもしてみるか。リス。お前は僕の腕にでも乗ってろ。」 「ロデオー?」 「メメメ〜!」 「ほっ!はっ!」 皇が足枷を外し、逃げようとするエスティマークに飛び乗り体重移動で進行方向をコントロールし逃げられなくしてやる。 「メメメ〜!メ〜!」 「はははっ!」 エスティマークも僕を邪魔者だと認識したのかブルブルと体を振ったり、走り回って僕を振り落とそうとする。 「…まぁまぁだな♪来い、リスー」 「オー…?」 「やったことない割に完璧じゃん…」 流石に暴れ回るエスティマークにリズを向かわせるのは危険と判断し、花粉で王子の元へ届ける。 「ウーー♪」 エスティマークの背に王子の補助付きで乗るリズ。 「気ぃ抜いてると酔うぞ。」 「ウウェッ…ウオウ…」 「やれやれ…」 「ウッ?」 王子がリズをお姫様抱っこ!!…わぁ格好良い!似合わないのに似合ってると言うか、ちょっと強引なお姫様抱っこだ。 「ウー♪ウェイッ!ウェイッ!」 「へいへい♪」 「メメメ〜!!!」 暴れ回るエスティマークの上、穏やかな時間を過ごすリズと王子…♪ ──後でボクも挑戦してみようかな…♪ それと、段々魔力(ルナール)が戻り始めているようだから後でもう一度血抜きが必要そうだ… リズに見せない為の口実…そろそろ頃合だと思うし、食事を準備して貰おうか♪ 再びエスティマークを拘束し、外に放置して、僕達は室内で昼食。 「やっぱこの星で一番美味い料理はコテパンだな。」 「ウー☆☆」 「あはは、そうかな…?♪」 「まぁ、他にもあるかも知れないな。見つけようぜ、リス、皇。僕達の答えを、僕達の力で…!」 「はいはい今度美味しい現地の料理リサーチしとくから☆」
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