終章『瑠璃色の空を見上げて(後編)』

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──TC8G19。タクロン3:68。 皇から通信が入った。何でもリスはもう起きていて、弁当作ってどっかに遊びに行こうと言い出してるとのことだ。 『王子、何かリクエストある?』 「リクエストねぇ…水族館に行ってレモンアイス…いや、クッキーの気分かな…」 『了解☆ 水族館は難しいけど…レモン味のクッキーなら自信あるよ〜☆』 「え?レモン味のクッキー?美味いの?」 『美味しいよ♪ボクを信じて☆』 「信じられない。」 『信じてよ!?』 ──タクロン4前。何時ものようにリスと皇家前で待ち合わせてもいないのに遭遇する。 「ウー☆」 ぴんぽーん。 「やぁいらっしゃい☆」 気持ちの悪い男装女が出迎える。 「先ずは王子、レモンクッキーもアイスも作ってるから食べてってよ☆」 …あれ?何かムキになってね?こいつ。 「…美味ぇ。」 レモンクリーム、そう言うものもあるのか。と言うかそんなもんどうやって作ったんだよ… 「ウー?♪」 「…レモンアイス食うか?」 「ウー☆☆」 「全部は食うなよ?」 「で、何処に行くかは決まったか?」 「うーん…それなんだけどね。水族館が無ければ水族館を再現すれば良いじゃない?って。」 「再現?」 「つまり映像館とかどう?」 「映像館ねぇ…」 行ったことは無いが聞いたことがある。所謂VR、バーチャル映像を何でも見られる広いテーマパークだと。確かPXRON地区にあった筈だ。 「まぁそれで良いか。この星ズオーゾとウッドロック以外何も無いもんな…」 「じゃー今日の料理行こっか☆」 「ウー☆」 …何かTV番組染みて来たな。 「レモンクッキーとレモンアイスはボクが並行調理するから、ポップコーンを作って行こうか☆」 「ポップコーン。」 「ポッッ!?プコーン?」 「取り敢えず切るとこ間違ってる。」 「…そういやポップコーンって作ったことはあるけどあれ何がどうなってるんだ?」 「ウ?」 「…この星には無いか。(かった)い“豆”みたいなのが弾けて(ポップ)、ふわふわした食感の謎の食べ物になるんだよ。」 「いや、言い方… んん♪良い質問だね☆」 両手に2種類の魔法を出して説明を始める。 「先ず、こっちの黄色いの。普段食べられていたとうもろこしは『スイートコーン種』と呼ばれるんだけど。 リズ、試食してみる?☆」 「ウー☆」 「ポップコーンに使われるのはこっちの赤くて硬い、『爆裂種』と呼ばれるもの。 削る前の鰹節並に硬いらしいよ?♪」 「かつお節並ってマジか。…てか良くこんなもん食おうとしたな。」 「人間って凄いと常々思うよね☆ で、原理なんだけど。王子には“お餅”で説明した方が分かりやすいと思うんだ。」 「オモチ〜?」 「今度食べようね☆」 「で、餅を焼くと、中の水分が蒸発する。この際に含まれる圧力が餅を膨らませるんだ。 けれど、餅には硬い殻なんて無いから、風船のように膨らんで、割れる。 ポップコーンは圧力に耐えてしまう為、耐えられなくなった時の爆発が大きい訳。」 「要するにポップコーンは爆発した水分パッサパサの豆のようなものってことか。」 「そう言うこと☆ 因みに、映画館で良く提供される理由は食べる音が映画の邪魔をしないからだと言われているね。」 斯くしてポップコーンが完成し、僕達は映像館へ向けて出発した。 「…あむ。」 レモンクリームをサンドしたクッキーって意外とイケる。 レモンの酸味と甘み、クッキーと交わることで生まれる旨味。病みつきになりそうだ。 ポップコーンも美味い。塩が適度に効いている。 「映画館行く前にポップコーン食べちゃうんだ…」 「映画見る前に1口くらいは食べるだろ?」 「えっと…ボクは食べない派かな。」 そんなこんなで映像館に到着し、地球の水族館、折角なので海外の映像を映し出させる。 「おー。」 「ウー!?」 流石は海外。日本とは水槽のスケールから違うな。 …ただ、水槽がデカすぎて魚が遠い気がするが。まぁ、望遠機能使えば良い話か。 その後は普通にクッキーとアイスと水族館を楽しんだ。 「…水族館とポップコーンって合わないな。」 「そうかな?美味しいよ?☆」 「食べながら移動してると映像酔いに似た感覚を覚えるんだよ。」 「ウ〜…」 「あ〜…それはあるかもねぇ。」 「次は何処行く〜?☆」 「水族館自体飽きて来たのもあるが、こう言う商売は大概中国だろ。」 「商売って…じゃあ中国の水族館ね☆」 「ウ〜☆」 「お〜…って何だありゃ。」 水槽の中に筋骨隆々のブロンズ像のようなものが沈められている…良く見るとその像はトライデントを持っていた。 「…何で水族館にポセイドンがいるんだよ…!?」 「あはは」 「あははじゃなくて!」 ──タクロン6頃、ザナ地区の自宅にてドアチャイムが鳴った。 「ウ〜、コレイル〜?」 粘土細工の魚達、相変わらずクオリティ高いなおい。しかもちゃんと水槽まで再現されている。 「いらない。」 「ウ〜…ジャ、コッチハ〜?☆」 「これは…」 恐らく何時かのマルグオガナムの余りだろう。アイスとクッキーが形作られていた…。 「…お前、いくら僕がプレゼントを受け取らないからってこれは無いだろう?」 「ウ〜!ナンナラウケトル〜!?」 「ナンなら受け取る。」 It’s王子ジョーク。実際ナンなら受け取るだろうが。 「ナンッテナニ〜!?!?」 あ、知らないんだっけ。 「皇にでも教えて貰え。」 来週辺りインドカレーが食えるかも知れない。 「ウ〜!?…カエル!」 「よし、帰れ。気を付けてな。」 …玄関から揺れるリスの尻尾を見送り僕はふっと笑った。
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