終章『瑠璃色の空を見上げて(後編)』

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TC8G20。 今日も映像館に3人で行くことになった。既にマンネリ気味の僕である。 …今日は世界の動物園巡りってことになった。 「大体お前地球1周旅行してたって割には引き出しが少な過ぎんだよ。」 「ご、ごめん…観光旅行じゃなかったから……」 「何だよつまんねぇ奴だな。」 「ご、ごめん……」 「…まぁ良い。今後はこっちで地球の名所を調べてみるか。」 「ありがとう…(´;ω;`)」 「顔キモい。」 「酷っ!?」 「さて、今日の料理だ。」 いよいよ以てTV番組染みて来た。 「あ、今日のはあんまり外で食べる系じゃないからね。1種類だけなら映像館でも楽しめるようなレシピを考えてあるけど。」 「1種類あれば良い。」 まぁ美味ければ、の話だが。その点の心配は不要だろう。 で、材料〜♪ 「…何だこの粉。砂か?それにしては粒だっていないな。ヤバい粉か?」 「やばい粉な訳無いでしょ!? きな粉だよっ!!」 「きな粉か…そう言やきな粉ってどうやって作るんだ?」 「きな粉(きなこ、黄粉)は、大豆を炒って皮を剥き、挽いた粉を言うんだ♪」 「へー。」 「キナキナコ〜〜☆」 「次にお団子とお煎餅を用意するよ♪」 「おいざっくり工程省き過ぎじゃないか?」 「え〜じゃあ回想映像(調理工程)見る?」 「要らん。」 「どっちなのさ…」 「きな粉に砂糖をまぶして〜♪これに煎餅をべったりくっ付ければ…」 「おい…お前これ…『きな粉餅』じゃねぇか…?」 「そうだよ♪きな粉餅完成〜☆」 「ウ〜☆」 「おい…お前これ特許…」 「異世界だからセーフ!」 「…まぁ良いか。美味さが保証されてるんだし。」 「『きな粉餅』だけじゃないよ!」 「あん?」 「製法を変えれば『ばかうけ』だって『雪の宿』だって…ボクにはじゃがいもだってある。『ポテチ』だって『カラムーチョ』だって『じゃがりこ』だって『ジャガビー』だって作り放題なんだよ…!☆」 「…。」 「ウ〜☆」 …やはりこいつはマッドサイエンティスト…いや、マッド料理研究家だな… 「で、きな粉餅は恐らく映像館用だろうが、他には何があるんだ?」 「串団子だね☆」 もう出来てる… 「折角だから串も食べれるようにしてみたけどどうかな?♪」 「どんな串団子だよっ!?」 「ウ〜?」 …きな粉団子完成。 「…何か物足りねぇな。」 と言ってきな粉団子を完食する王子。 「ウ〜?ウマイッッ」 「くくく…♪」 「ぁあ…口の周りきな粉まみれじゃないか…ふふっ♪」 …まぁこの景色が見れただけでも、大豆を作った価値は充分にあったかな…♪ 映像館に移動し、海外(良く良く考えたら異世界で使うのはおかしなワードだが)の動物園の景色を映し出す。 「…おぉすげー。」 「ウ〜!?」 最初に目に飛び込んで来たのは緑色の象だった。どうやら動物園のゲートに植物で作った象の像らしい。 流石海外。動物園に入る前から動物を見せて来るとは。しかも普通に象を見るより格好良いシーンになってないか? 「…そう言えば海外ではこう言う、植物で動物を作るの偶に見掛けるよね。」 「知るか。」 「ウー…コレツクッタ?スケール、チガウ〜…」 「…言っとくがこんなにでっかいのを作られても絶対受け取らないからな?」 「ウ〜!?」 「何処に置けってんだよ。」 「まぁまぁ…♪」 「次は…これも凄いな。」 「先ず日本じゃやらないよね♪」 「ウ〜!」 客の乗った軽トラみたいな車を追い掛けて来るキリン。さす海外。 「…流石にライオンは何処の動物園も同じか。」 「まぁ、動物園自体そう変わらないんじゃないかな…」 L.I.O.N 「ライオーン?」 「…けどやっぱ日本の動物園と比べるとでけぇな。」 「そうだね♪」 「ウ〜!?」 リスが驚いているのは客が象に餌をやっているシーンだ。象は長い鼻でそれを受け取って食べる。 「…いや、ズオーゾの方がもっとびっくりするアレだっただろ。」 「ウ?ウ〜…」 どうやら海外の動物園とは言え、異世界の動物園を超えるのは難しいようだ。 TC8G21。 マルグオガナムが無くなったとかで、朝からハントに出掛けて。帰りにリスに渡しに皇ん家に寄った。 「リス、何か言ってたか?」 「地球の色んな動物を見て創作意欲が刺激された、みたいなこと言ってたよー☆」 「へー。僕らに取っては見慣れた光景だけどな。」 「リズってもしかしてタッドルより地球の景色の方が好きなのかも。」 「そりゃ結構。ロケーションを決める甲斐もあるってもんだ。」 「頼みます…(´;ω;`)」 「だから顔キモいって。」 「だから酷いって!?」 「ウ〜☆」 あっちは職人。 「…。」 こっちは地道なプランナー。 「なんかこう…つまみでも欲しいところだな。」 「待ってました!☆」 「待ってたのかよ。」 「いや、流石に食べたくない人には押し付けられないじゃない?」 「まぁそれもそうだな。」 「じゃあ今日は次々行くよ〜☆」 「先ず枝豆!」 「次に大豆!」 「最後にもやし!!」 「ウ〜☆」 「…いや、大豆にもやしって。枝豆だけで良いだろ?あとリス手洗ったか?」 「え〜?もやしは兎も角、大豆は結構生でも行けると思うな☆ 因みに日本の市場に出回っていたもやしは緑豆(リョクトウ)もやしって言う種類みたい☆」 「因みにさっきのは成長順に並べたもので、大豆からもやしが生えて来るんだよ。知ってた!?」 「いや知らなんだ。」 「ボクも☆」 「知らないのに作れたのかよ!?」 「いや、大豆って日本人には必要不可欠じゃない?だから色々調べてたんだけど、そしたら出来ちゃった☆」 「いや、出来ちゃったじゃ…はぁ。」 「ウ〜☆」 ライオン、カバ、キリン、パンダ、アリゲーター。 どれも動物園の姿を象ったものだからか何処か平穏無事な光景だな…欠伸が出そうだ。 「どれ、僕もチーターでも作るかね。」 「ウ〜?」 「ウー…タクサン、ツクリスギタ…」 「作り過ぎた?」 「ぁはは…リズのお家凄いことなってるもんね♪」 「そうなのか?」 最近行ってないなぁ… 「オクトコロ、モウナイ〜…」 「…ボクの家に置くのは…何だか不自然だね。」 「勿論僕の家もNGだ。」 「ウ〜…」 「ミエルにでもくれてやったらどうだ。…動物達のオモチャになるかな。」 「あはは♪まるで自然の摂理だね☆」 「笑って言うことか。」 みたらし団子を串ごと平らげ、ミエルん家に持って行くか破棄するしか無いと結論付ける。 それでは勿体無いと皇が言い、ミエルん家に置いて来ることが確定した。 …そう遠くない未来にこれらは原型を留めなくなるだろうなと思うと、心惜しくなり、1枚だけ写真を撮る僕だった。
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