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TC8G22。
○ピコと○ーリッシュ両手に今日も映像館へとやって来た。
広がるのは一面の雪。そして時々見える雪山だ。
そう。ここは南極大陸。僕達のいた世界では人類未踏の地だったが、他の地球ではどうなのかな?
因みに今回から映し出す地球の光景はEN0と言う世界の光景となっている。
EN0世界の人口は70億余、魔物や宇宙生命体の脅威も無い、南半球が人類に依って支配されている僕の知らない異地球。
「あー…アイス美味ぇ〜。」
一面の雪景色の中アイスを食べると言うのも、牧場の中で焼肉を食べるようなもんなんじゃ?とは思わなくも無いが。
少なくとも寒くない雪景色の中で食べるアイス三昧は悪くないと思える。
「レモンアイスも用意してるけど食べる?♪」
「食う。」
と言うか何でまた作ってんだよ。
「…こんだけ雪ばっかりだと雪像祭りでもやりたくなるな。」
「マツリー…ジュルリ。」
「祭り=食事会じゃないからな?」
「ウッ!?」
「あはは…この星では難しいかもね…
雪どころか水ですら貴重な資源だし。」
「あー…そうか。そうだな…」
「…て言うか、雪しかねーな南極。」
「そ、そうだね…」
「ウー?」
「…空の上の景色も空と雲しか無ぇのかなー…」
「そ、そうかもね…」
「空じゃなくて海にするんだったかなー?」
「じゃあ今から行ってみる?♪」
「寒くない寒中水泳とか嫌だ。」
「えー…」
地球に帰ったらどうにかして南極で寒中水泳をせねば。
「じゃあ気分転換に南極大陸の動物の映像でも見ようか♪」
「ウー☆」
「動物?南極大陸には動物がいるのか?」
「うん、そうみたい。ほら、あそこにチラッとオットセイ☆」
「うわ、ほんとだ…」
「あれは…シロクマか。」
「えっと…ホッキョクグマだね。」
「え?何で」
「北極で発見された固有種が南極にもいたってところじゃないかな。」
「ふーん。」
「ウー♪モッフェモ〜☆」
「うん♪モフモフだね♪抱き着いてみたいなぁ…☆」
ヴァーチャルじゃ無理だけどね…
「嫌だよ暑苦しい。」
南極の景色を見ながら暑苦しいだなんて…ふふっ♪
「あれもホッキョクグマか?今度は家族か…」
そう言って何故か前髪を弄る王子。これは気分がモヤモヤしてる時の癖みたいだ。何でだろう?
「ウー♪チッサイ♪カワイイ〜☆」
「うん☆赤ちゃんは可愛いよね♪」
「そりゃ親よりは可愛いに決まってるだろ。」
「ウー…」
何やらリズも家族に就いて考えてるらしい。…うーん、ボクも家族に会いたいなぁ…生前から長いこと会えてないからなぁ…
「あれは…」
「ペンギンだね☆」
「見りゃ分かる。」
「ウー!?カズ、オオイ…」
「差し詰めペンギンの帝国だな…☆」
…次はリスに大空と鳥の群れを見せてやりたいと思う僕であった。
「南極にはキツネもいるのか。」
「ワァァル!♪」
「いたなーそんなやつも。」
「うん♪あれはホッキョクギツネだね☆」
「…ホッキョクギツネ、お前もか。」
「…しかし、あれだな。ホッキョクギツネ、可愛いな…」
「うん♪そうだね…☆」
「ウ〜…☆」
白くてモフモフで顔が犬っぽい。これはペットにしても良いかも知れない。世話をするのは面倒だけどな。
PXRON地区、皇家。
「えーとじゃあ…お鍋でも作ろうか?」
「鍋におを付けるな。意味が変わるだろうが。」
「ボクはオナベじゃないからね!?」
「僕も違う。」
「…いや、男装してる時点でオナベなのかな…?」
「そこは自信を持って否定しろよ。」
「ウ〜?」
「じゃあ鍋の準備をします。」
「オ〜☆」「おー。」
「食材はピタゴン肉を始めとした各種肉と、ボクの魔法で出した各種野菜です。」
…やはり料理番組だ。
「先ずは食材を食べやすい大きさにカットします。」
「リス、食材を握る手は猫の手…って言っても猫を知らないのか。」
「グーだね。」
「チョキでもパーでも怪我をするぞ。グーだ。お前はグーになるのだ。」
「グゥ〜☆」
「食材を程良くカットしたらボアール肉で取った出汁で煮て行くよ♪」
「ボアール肉って臭いって言わないか?」
「お野菜の風味で臭みも取れるから大丈夫だよ☆」
「…そうか。」
…本当に大丈夫かな…
「お鍋、じゃなかった鍋の完成〜♪」
「ウ〜☆」
「じゃあ“お勉強”の時間だな。」
「ウ〜☆」
「寒っ!」
「ガタガタガタ…」
「南極の平均気温は-1℃。地球の冷蔵庫が2℃~5℃だからそれより寒いくらいだね。」
「真夏は冷蔵庫の中に入りたいと思ったくらいだがこんなに寒かったのか…」
「ガタガタガタガタ…」
「リズ、大丈夫?お鍋食べよ〜☆」
皇がエアコンをオフにして鍋を持って来る。
「美味い美味い…」
「ハフハフ…ウ〜…」
冷えた体に熱い鍋が染み渡る…
「南極の冬の気温は-20℃くらい…こ、氷を作れる、れ、冷凍庫が-18℃くらいだから冷凍庫の中にいる以上の寒さだね…!」
「これは死ぬ!死ぬ!!」
…あ、もう死んでる。
「ウ〜!!」
再びエアコンを切り、IHで温めていた鍋を持って来る皇。貪り食う僕とリス。
「因みに、地球上で最も寒い気温の記録は-89.2℃…」
「地獄かよ…」
「ウ〜…」
「記録した人がいるってのが凄いよね…」
「本当だよ…どうやって記録したんだ?そもそもどうやって生きて帰ったんだよ…」
「動物達はあんな寒さの中でも逞しく生き、N0世界では南極地域観測隊と呼ばれる人達が南極の調査を行っていたんだよ…」
「ぞっっ…とするな…」
「ウ〜…><」
「ボクらの世界もタッドルも大変だけど、一見平和そうに見える世界にも極限の環境があるってことだね…」
…やっぱり地球に帰ったら南極で寒中水泳をやると言う野望は捨て去ることにした僕だった…。
──もう南極は懲り懲りだ…!
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