終章『瑠璃色の空を見上げて(後編)』

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──TC8G23。 今日もアイス両手に映像館へと向かう僕達。 「ウ〜!!」 まず見えたのは大空と鳥の群れ。 小鳥の大群だが、リスは満足のようだ。 …良く良く考えたら大きな鳥は群れとか組まなそうだよな。 イメージをデータとして映像館に提供し、一羽の鷹が僕の指から大空へと飛び立った。 鷹は群れに混ざって行くと先頭に立って飛び始める。 その後も僕のイメージ通りに鷹達は空を舞い、5つのグループに分かれた。そして5つの輪を大空に描き、散って行った… 「ウ〜☆」 「…これ、空軍の式典飛行のあれじゃない?」 「五月蝿ぇ。格好良ければそれで良いんだ。」 「ウー☆」 道理で見覚えがあると思った…子供の頃の記憶が混じっちまったな… 「序でだから海中のペンギンの群れも見てみるか。」 「リス、これが“鳥”だ。」 「ウ〜☆ガブガブ…」 がぶがぶ? 「ダチョウとかアヒルとか白鳥とかフラミンゴとか見ないの?」 「見たけりゃ勝手に見ろ。今日僕はハワイを観光すると決めてるんだ。…あ、白鳥良いな。」 「どっち!?」 「白鳥のちハワイ。」 「天気予報みたいに言われても…」 水面にぽつぽつと浮かぶ白鳥。 まるで空に浮かぶ白い雲のようだ。 …飛び立った白鳥の群れの姿を見てみたが、白い雲には見えなかった。白い鳥だ。 だが、やはり青と白のコントラストは目に快感をもたらす。 「ウー、バサッバサッ!」 「ああリスよ、どうしてお前はリスなのだ?♪」 「ウ〜〜〜?」 首が折れそうな程に首を傾げるリス。…フッ、まだまだだな。 「おー、予想以上だな。」 エメラルドグリーンの海、白い砂浜、それを囲むビル群。控えめに言っても素晴らしい景観だ。 「それは何より♪」 「お前は行ったことあるのか。」 「ここまで綺麗じゃなかったけどね♪魔物もいない訳じゃ無かったし。」 「ウ〜…マモノ〜…ユ゛ル゛サ゛ン゛!!」 「どうしたリス。」 「これでエアコンも完備されてたら最高のハワイを楽しめるんだがな…」 元々『寒さの次は暑さだな』と王子が言って南極の次はハワイにしようと決まった訳だけれど。 …動物園に水族館に南極にハワイってほぼ共通点無いなぁ…♪ 「暑さを味わうのはボクん家で良いでしょ?大体王子がどうせ観光するなら広いハワイが良いって言ったんじゃない。」 「それもそうだな…」 「じゃあ何処から行こっか?」 皇がガイドブック片手に仕切り始める。 「ワイキキビーチ…はお前ん家で良いな。」 「了解☆」 「…アラモアナセンター?」 「所謂ショッピングモールみたいだね☆」 「へぇー。ハワイのショッピングモールねぇ。…て情緒も何も無いじゃねぇかショッピングモールって。」 このガイドブックは観光と言うものを分かっていない気がする。 「カイモノ…モール?」 「あはは♪折角だから行ってみようよ☆」 「ったく仕方無ぇなぁ…」 「ウ〜☆」 「あははっ☆」 入ってみると謎の踊りをする民族的衣装に身を包み、両手にポンポンを持った一団が現れた。 …何かこう、僕とはノリが合わないな。そう言うの良いから次。と思ってしまう… 「…てか、アラ@モアナセンターなんだな。」 細かいだろうか。 更に進んでみるとショッピングモールと言うのは違うような、ちょっとした庭木が望める場所にやって来た。 「…流石にハワイのショッピングモールだな。目で楽しめるのは分かったが、ショッピングはどうするんだ?」 「あはは…♪ウィンドウショッピングだね☆」 「ウィンドウショッピングねぇ…」 「広いな…」 ガイドに依ると340以上の店舗と100以上のレストランがあるらしい。まぁ、後者は見るだけ無駄だが、1店舗の雰囲気ぐらいは味わって帰っても損は無いかも知れない。 あと、広過ぎてトロリーバス乗り降り自由ツアーとかが5000円くらいからやってるそうだが、ここは映像館だ。余分な移動はショートカット出来る。 さて、観光を始めようか。 「こんな所に驚安の殿堂が…」 「ウィンドウショッピングしてるだけでも楽しいよねー☆こっち来てからハマったんだけど。」 …てな感じで。 「何でもあるよ王子☆何見る?☆」 「うーーん…雑貨とかもあるのか?」 「うん☆」 あれ?ガチのウィンドウショッピングになってない?☆ …そんな風に軽く1時間を超えるウィンドウショッピングを終え。 僕達はアラ モアナセンターを後にするべく食事の気分を味わうことにした… 「コレナニ〜?」 「あ、それはね〜…って説明しても分かるかどうかな〜…」 リスと皇は片っ端から食事を見ているようだが僕は違う。手当り次第に一瞬だけ映像を見てその中から気に入った一食を脳で味わうのだ。 …っと、今のは…? 「和食!!」 膳に乗せられたお茶碗に入った白米、味噌汁。皿に盛られた豚カツと思しき揚げ物と紛うことなきエビフライ。 「お♪王子、良く見つけたね〜☆」 「ゴハン〜♪ジュルリ…」 「お味噌汁は無理だけどこれくらいなら再現出来そうだよ♪後で食べよっか☆」 「そうだな…もう、あれだな。何でもあると言うより何でもアリだな…アラ モアナセンター…」 「そうだね☆」 そりゃガイドブックの2番目に載るわ… さて、ガイドブックの3番目は… 「ダイヤモンドヘッド?何だダイヤモンドヘッドって?」 「ウ〜…キラキラアタマ?」 「…もしかして形状の意味か?」 「…ちょっと惜しいかな。ヘッドは火口の意味で、ダイヤモンドは名前を付けてから拾ったのは偽物でした、と分かったってオチ…」 「…やはり地名と言うのは適当だな。火口でダイヤモンド擬きを見付けたからダイヤモンドヘッドだなんて… 地名も子供の名前くらい真剣に考えないものかねぇ…」 …うーん切実… 「…何か、上空からの映像だと火山ってよりパイの包み焼きか何かに見えて来るな。」 「あはは♪美味しそうだね☆」 「パイー?」 「また今度食べようね☆」 「そうだぞ。こんなちっちゃいパイを作るのにも何層にも生地を…って何でダイヤモンドヘッドからパイに話が脱線してんだ。」 「王子がパイの包み焼きみたいって言ったんじゃない…♪」 そうだった。…いよいよこいつらに毒されて来たか? 「本当、ハワイって何でもアリって感じだよなぁ… 火口に緑が見えたり、山のすぐ傍にビルがあったり…日本じゃ考えられないよなぁ。」 「そうだね☆」 「ニホンー?」 「ぁあ、日本はボク達が生まれ、暮らしてた国で地球にあるんだよ☆」 「やれやれ…日本も案内してやんなきゃなんないのか?」 …いや、ムサシは日本で発見された魔物だ。生前の僕が戦ったのも日本の可能性が高い。 …日本巡りをすれば失われた記憶にも辿り着けるかも…? 「…やれやれだぜ。」
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