序章『パンは投げられた』

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「あっははははははっ!格好悪!あははははっ☆」 「うぅ…」 ぐうの音も出ない…。 「…ん?」 あれ、視界がおかしい…。あれ!? 「ぁ?」 「ちょっと待って、何か…え?魔物出てないよね!?」 「は?何言ってんだ?」 「だよねぇ……ちょっとさっきの技、生前に使った時には体にダメージが来てたんだけど…。…機械だからバグってるのかなぁ…。」 「は?」 「…いや、『ゲージ』って言うの?魔物の頭の上に出るあれ。」 「…ぁー。『スライム』とか『ゴブリン』とか名前が出るあれか。僕あれオフにしてるわ。」 「あ、オフね…。成程。」 因みにゲージは本来、魔物に反応してその能力を教えてくれる機能なんだけど…超能力のデメリットか、魔物も出てないのに視界にいくつもゲージが表示されている…。ちょっと邪魔なんだけどっ!? ゲージには魔物の名前、クラス、サイズ(Lv)、体力(HP)が数値化されて表示される。 レベルとクラスの違いは、分かりやすく言えばキューブの質だ。キューブにはクラスがあって、1粒が大きいと魔物の強さが桁違いになる訳だ。 魔物の強さを表すクラスには「ノーマル」、「タイコンデロガ」…そして「ムサシ」などがある。 タイコンデロガクラスのキューブは、ノーマルクラスの100倍って感じ。 レベルはキューブの量だね。1レベルがキューブ100個くらい。勿論、キューブが多ければ体も大きくてその分強い。 例えばタイコンデロガ級のスライムなら「Tースライム、LV3 HPーERROR/386323」とかそんな感じ。…エラー出てるじゃん!?うわぁ…ボクの体がぁぁ…。 「あーっと…あれ、『メニュー』出ない…。」 「は?はははっ!ヤバいじゃんお前♪」 詰んだ…。 「助けて王子…」 「断る♪」 「ぅう…じゃあ先に本部に戻るから…。」 「…回収任務か…へいへい。さっさと行け。」 「ごめんね…。」 良いとこ無いなぁボク…。 …視界がゲージで埋め尽くされていた為に、“心眼”を発動させてテントまで戻って来た。 このテントは軍(騎士団)の装備の1つであり、ボク達“ワルキューレ”をこの中に入れて、テントごとテレポートでミッションエリアに運んでくれるって訳。 転送後はここを拠点にして作戦を開始する。予備の武器をここに取りに来たり、負傷者が出ればテレポートで王国──ボク達の基地に帰すことも出来る。 …まさかボクが負傷するとは思わなかったけどね…。 …負傷? 「あ! ふー…。」 頭の中にきらきらとした“花粉”が発生する様子をイメージする。 …視界を覆うゲージが消えて行き、その隙間から白く輝く花粉が顔を覗かせる。 …これがボクの魔法、回復魔法だ。 ボクの使える魔法はほぼこれだけ。攻撃魔法は生前から一度も成功した試しが無い。 まぁ、“構築魔法”や馬鹿力もあるし、戦闘には困らないのだけど。 「白百合 皇の帰還を確認。整備室へ。」 騎士団の指揮官さんが皆に指示を飛ばしている。 「…ぁの~すみません…もう治っちゃいました…ぁはは。 心配掛けてごめんなさい…。」 申し訳無い…。 「そうか。ミッション完了だ、ご苦労。」 「はいっ!ぁ。皆さん回復魔法いかがですか~? フルーツもありますよ~♪」 …まぁ、どっちも回復魔法だけどね。♪
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