序章『パンは投げられた』

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「ほらよ、持ってきな。」 「ウッ…。」 金を払おうとする亜人の少女に品物を投げて渡す店員。うわ…(誰かあいつの店潰してくんないかなー…。) 「…はー…。」 魔法で炎を発生させ、合成食を液体にして口にぶち撒ける。 …関わりたくないと思いつつ、体が勝手にそちらへ吸い寄せられて行く…あのお人好しにでも感化されたかねぇ…? 「おい、下がれ。獣人。」 「ウ…?」 獣女は小さな腕にパンを10個程抱えようとしている。…鞄なり、もっとでかいパンだかは無いのだろうか、…ここの住人はどうにも手際が悪い。 「これはこれはワルキューレ様!今日は何をお求めですか?♪」 「店のパン全部寄越せ。」 「は…ハッ!?」 「おらさっさとしろ。買ってやるって言ってるんだ。…それとも奪われる方が好みか?」 「…ッ!お、お待ち下さいすぐに…っ!!」 「じゃあ準備してろ。」 「は、はいッ!」 態度の割に仕事はきちんとしているようだ。それなりに在庫があるのだろう、店員は食料庫へと早足で向かって行った。 「ウー…?」 獣人は不思議そうに僕を見上げる。…まるで空でも見るかのように首が真上を向いている…フッ♪ 「お前お腹にポケットとか無いの?」 カンガルーでは無さそうだが。何だこのでかい尻尾。…スカンク? 「ポケット…?ナイ…。」 「…まぁ普通は無いか。無いなら買うものだぞ?」 「ウー…?」 獣人は小柄だ。何日分かは知らないが1人で食べる量にも見えない。…何故かな。こいつは誰かに首輪で繋がれているような…そんな気がするんだ。 「ウー…♪」 変人爺さんの店でベビーカーらしきものを購入し、それにパンを30個程積んで亜人にくれてやった。 「そんだけあれば暫く買いに来なくて済むだろ。」 あんなロクでも無い女と顔を合わせるのは月1くらいで充分だ。 「ウー…?クレル…?ナンデ…」 「…パンが好きなのかと思って。」 「ウー♪パン、オイシイ…」 「良かったな、いっぱい食えるぞ。」 「ウン…♪」 …ふ…♪ 皇「あれ?王子?どうしたのそんなに沢山パンを買って?♪」 「…げっ!」 「…いやいや、げっ!ってそんな嫌そうに…」 「嫌だもん。」 「だもんって…」 「ウー…ダレ…?」 「ぁはは、ボクは皇♪」 「スメラ…」 「君は王子のお友達かな?♪」 「ト モ ダ チ…?」 「…」 該当するタッドル語が無いのだろうか。…つまり、友達と言う関係性がこの星には無いのだろう。 「…ふぅ。なりたきゃ友達にでも何でもなれ。」 「ト モ ダ チ?」 「ぁあ、友達だ。」 めんどくさぁい… 「ウー??」 「こら、くっつくな。」 「トモダチ…?」 「分かったから、友達だから抱き着いて来ようとすんな。揺するな!」 「ウー…」 「…」 この星ではこう言う文化の違いから起きるトラブルが割とある…。お前の所為だぞと隣の男装女を睨み付ける。 「…ぁはは。」
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