序章『パンは投げられた』

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「…」 「…♪(ブン(ゆらり)ブン(ゆらり))」 …ほんとでかいなこいつの尻尾…やっぱ歩きにくいわ。左手の置き場が無い。こいつが前屈みになって車を押してるせいで尻尾がもろに僕の邪魔をして来…いらっ。 「…と言うかこいつ何?」 獣「?」 「お前だよ。狸か、スカンクか。」 ──アライグマとかか?── 「熊とか鼠っぽい動物はいるよねここ。」 「クマ…ネズ…ミー…?」 「種族は…ん?何だろこれ…まだバグってんのかな…?」 「どうした?」 「いや、『スペック』が出なくて…」 「フン。だったら狸で良い。」 「いや…狸って言うか、この尻尾はリスじゃない?」 先がちょっとくるんってなってて、彼女自身小柄だし、リスっぽく見えて来た。 「成程リスか。」 「リズ。」 「ん?」「え?」 「ワタシノ、ナマエ。…リズ。」 「あ、そっか…よろしく、リズ♪」 「リスでリズ…リスだな。」 「いや、リズだって。」 「見た目がリスで中身がリズなんだからリスで良いだろ。」 「いや、見た目より中身だからリズでしょっ。」 …いけないいけない。つい王子のペースに巻き込まれそうになる…。 「…ぁはは、気にしないで良いよ?改めてよろしくね、リズ♪」 「リス。」 「えぇ!?」 本名で呼んだのに訂正された!? 「ほらな?リスの方が良いって♪」 「…。」 コクコクと頷くリズ…もとい、リス? 「えぇ…? …まぁ、リスで良いなら…良いかなぁ…?うーん…」 …懐かれてるなぁ王子…♪何か羨ましい♪ 「ウー…ウ。」 「ん?」 「あ。あの建物だって♪」 …こいつはやっぱり動物の言葉が分かるのか。タッドル人でも獣人の“鳴き声”は解読出来てないだろうに。 「…お前家に住んでるんだな。」 「ウー?」 この惑星では気候の影響が無いから、住居の必要性が薄い。…他人の家か。生前は“お姫様”の家くらいだったな…まぁ良い。 「邪魔するぞ。」
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