序章『パンは投げられた』

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──テントから出るとそこは森の中だった。 森…と言っても植物では無く、ウッドロックとか言われる柱みたいな石で出来た森だけどね。 「んー…今日も良い天気だね♪」 深呼吸をして、ボク…白百合 皇(シラユリ スメラ)はそんなことを言った。まだ接敵していないとは言え、戦場での第一声とは思えない呑気なものだ♪ 「天気ってお前…この星に天気なんて無いぜ?昼も夜も無いってのに。」 「んー♪今日も紫色の空が綺麗だね☆」 「…馬鹿々々しい。」 そう言って彼女…白百合 王子(シラユリ オウコ)はテントのチェックを始めた。 「えぇ~…。」 綺麗な空だと思うけどなぁ…♪ …この惑星、“タッドル”に天気は無い。先ず地球で言うところの太陽が無い。更には雲や雨、雪も無い。 強いて言えば風とか雷はあるかな?(地上には落ちないけどね。) …まぁ、雲のようなものはあって。それがさっき言った『紫の空』…“ダスト”と呼ばれるものだ。 ──つまりは宇宙塵(スターダスト)。小惑星の微細な破片などがこの星(タッドル)の重力に捉えられ、その周囲を雲のように覆っているって訳。 太陽系の惑星で例えれば土星の周りの輪っか。あれがカプセルのように惑星を閉じ込めてしまってる感じかな。 この惑星には気温や気候等の変化は余り無いから、ダストに依って空の色が変わるのが『季節』ってところだね。 「良し。天体観測は終わったか?」 ──…ん?星が見えないなら天体観測じゃおかしいか。…気象…も無いな。えぇい面倒臭い星め…!── 「…ぁはは…ごめん。戦闘前なのに…。」 「…別に良いさ。空なんて、誰だって何処だって見上げるもんだろ。」 うわー…相変わらず格好良いなぁ…♪ …ボクと同じ顔で言われると何だかむず痒いけどね。♪ …因みに。名前や喋り方、見た目まで何かとそっくりなボク達だけど、別に姉妹って訳じゃない。 …どうやら“パラレルワールド”と言われるような…良く似た世界(地球)から来た、似た者同士…ってことみたい…。 …信じ難い話だけれど、実際出会ってしまったのだから受け入れるしか無いよね…。 …そもそもボク達は地球では死んだことになってるそうだし… 「…おいボケっとしてんな。蹴り倒すぞ。」 「ごめんごめん…さ、行こ?」 「ぁあ。」 戦闘…魔物の討伐任務の始まりだ。
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