その真実を私は知らないまま

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( 私はどうしたらいいの? 救急車を呼ぶ? 落ち着いて、落ち着くのよ、よく見て、聞いて、 港ちゃんの様子を。) 富士子は自分の目の前で起きている事を理解出来ずにいた。息子の港ちゃんの様子がいつもと違う。 重い心臓病で生まれた港ちゃんは半年前に4回目の手術を受けたところだった。 ( いつもと全然違う。 急にどうして?) 顔つきが変わっている港ちゃんを見て富士子は心臓の事を心配した。脈をとってみるが自分が心配して興奮しているせいか、なかなか上手くとれない。 そうこうしながらも港ちゃんの顔はみるみるうちに色が変わっていく。 ( どうしよう!私のせいかな。人混みに行ってはいけないとずっと言っていたから。病院の先生から言われていたから。) 一部上場企業のショッピングモールが近所に出来た。 近所と言っても車で20分のところだが。 それでもUSAのカフェやお洋服屋さんのテナントが入っていたので連日大盛況と報道されている。 「 人が少なくなった頃に行ってみたいな。」 テレビを見ながら一人言を言った港ちゃんの言葉を富士子は聞き逃さなかった。
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