その真実を私は知らないまま

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「 私も行きたい。」 「 じゃ、今度元気な時に行きましょう。」 港ちゃんは今日は朝からノリノリで車の中でも楽しそうだった。さっきまでいつものようにおしゃべりしていた。なのに駐車場に車を止めてチャイルドシートから降ろして車の外に出たとたんに、 「 行きたくない。」 と、言って動かなくなった。 モールの入り口の自動ドアはもう目の前にある。 歩いて5歩くらいだ。 港ちゃんがオエオエとなった。 ( いけない。 私も子供のころよくなってた。 お父さんもお母さんも私の言う事など気にもとめず、考える事すら無かった。どうしようもなく苦しくてたまらない時にこうなるのを私は知っている。 私は両親とは違う。 私は港ちゃんが一番大事。) 「 戻りましょう。」 港ちゃんを抱っこして車の中に入った。 家から持って来たお水を飲んで、ほうじ茶も飲んだらいつもの港ちゃんに戻った。 いつもの賢い港ちゃんだ。 間違いなく彼は私よりも夫よりも賢い。 生まれた時からずっと見ているからわかる。
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