突然の電話

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突然の電話

「んぁ、何これ?」  思わず声を上げてしまったのは、同僚たちとの飲み会から一夜明けた休日の昼前。目を覚ました後の日課になっている通知チェックをしたときに、何件もの不在着信が目についたのだ。しかも、よく見ると同じ番号からの着信。  誰だろうな……、そういえば昨日の飲み会では、普段は絡みのない同僚もかなり参加していたし、なんとなく場のノリでほとんどのやつと連絡先を好感したような記憶もある。  もしかして、(たちばな)さん……⁉  橘さん――(たちばな)亜衣(あい)さん。  会社の先輩で、入社したばかりの俺の面倒を一時期見てくれていた女性だ。指導のしかたこそ厳しかったが、ドS系の美女にしごかれていると思えばむしろ歓迎だったし、何より仕事が終わればわりと気さくなお姉さんに早変わりする人だった。  彼女と呼べる女性なんて高校生くらいのときにいたのが最後だった俺が彼女に惹かれるまでは対して時間もかからず、いつか機会があれば、仕事とは関係なく個人的にデートに誘いたいと思うようにもなっていた。  見た目も、スラッとした長身に整った顔立ちは研修中に飲みに連れていってもらった居酒屋が華やぐような雰囲気があったし、真っ黒というよりはダークブラウンと言った方が近そうな色の髪がポニーテールに括られていることで見えているうなじがすごくいい感じなのだ。  まぁ、うなじのことはあんまり言っちゃうと一気に変態臭くなるから言うのは(はばか)られるんだけどな?  そんなひとりツッコミをしながらも、ふと期待してしまう。  まさか、嘘だろ……?  だけど、十分ありえることだった。  橘さんも今日休みだって言ってたし、確かノリで連絡先交換もしたし。登録はたぶん眠気に任せてしてなかったんだろうけど……そもそもどうやって帰ってきたっけ?  胸を高鳴らせていると、また電話が鳴った。  ――――また同じ番号だ! 「はい、もしもし!」 『もシもし? 哲也くんかイ?』  聞き覚えのない声に、一瞬で残っていた酔いが醒めた。
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