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月曜日の疑惑
無駄に暑い日差しに起こされた月曜日。本当に早朝なのかと疑いたくなってしまうが、つけたニュース番組は間違いなく今が朝だと俺に教えてくれていた。
「ふぁ――ねむ……」
いつもなら憂鬱な月曜日の朝。だが、気の休まらない休日を過ごした俺にとって、平日はある意味待ち遠しいものでもあった。
恐らく俺の考えが正しければ、パストも平日はそう易々と電話なんてかけてこられないはずなんだ、先週末の飲み会のメンバーなんだからな、やつは!
携帯をいじれないくらい混雑した電車で、センセーショナルな煽り文句が節操なく並んだ週刊誌の中吊りを眺めて時間を潰している間も、最寄り駅から中途半端な距離を歩いている間も、パストからの着信はなかった。
何事もなかったように始まった平日。
しかし、俺の方が何事もないままでいられなかった。
「なぁ、田口」
「ん、どした?」
「お前さ、昨日とか一昨日、俺に電話した?」
外回りに行くとかで部屋を出た田口を追いかけて、俺は休日のことを確認することにした。田口は同期のなかで1番つるんでいる相手で、よく避けも飲みに行ったりしているし、橘さんの相談とかもたまにしている。
それに、時々周りのやつを驚かせては反応を見たりもするやつだから、あの陰湿ささえなければパストにぴったりなんだが……。
「いやいやいや、やべぇでしょ、それ! さすがにそんな不気味なことしねぇって! しかも野郎と電話するくらいならどっかナンパしに行くね」
引きながら笑うその姿に、嘘はなさそうに見えた。ほんとか~、なんて冗談めかして訊いたりもしたが、十中八九、田口はパストじゃなさそうだ。
こんなに気安く話せるやつを少しでも疑った自分を恥ずかしく思いながら、俺は出ていく田口を見送った。
そうなると、あとは……。
「――つぅわけなんだけど、お前か?」
「僕にそんなことしてる暇はないよ」
……昼休憩中なんだかイラつく言葉で返してきたのは、大崎だった。同期のよしみで連絡先こそ交換してはいるが、なんだか暗そうで何考えてるかわかんないやつだ。
「もういいかな、僕早く続きやりたいんだけど」
言いながら、もうスマホのゲームをいじり始める大崎。なんか癪に障るな……と思いながらその場を去ろうとしたとき。
「でも、意外だったな」
「あ?」
「佐々木くんってそういうの怖がらない人だと思ってたけど。今度、ストーカーへの対処法みたいの教えてあげようか?」
あくまでスマホの画面からは目を離さずに、けどなんだか楽しそうに。何よりちょっとにやけた口元に、どうして何もせずにいられたかわからないくらいだった。
「別に」
それだけ返して、俺は昼食を買いにビルを出た。
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