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「そう思ったことはない。だが、敏司がいなくなれば寂しいかもしれん」
それは確信に近かった。恐ろしい存在と聞かされている嘉神の家から、またみちびき様に好意を持つものが現れるとは考えにくい。そうなれば、敏司を懐かしく思うのだろう。
「じゃあ、できるだけ長く一緒にいてあげます」
無邪気な声で、敏司が言う。
「僕が花婿になったら、いっぱいおしゃべりしてあげます。あ、あとご飯も一緒に食べてあげます。そうすればみちびき様もおいしいでしょ?」
いい考えとばかりに、敏司が提案する。それにみちびき様は、苦笑という形で答えた。しかしその中には、どこか嬉しさもまざっていた。
窓の外は、もう日が昇ろうとしていた。
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