導きの儀

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 食事が終われば、膳をまたもとのように外に出す。箪笥の前に膝をつくと、そこから何枚かの着物を取り出した。赤、緑、藍、黒、と取り出すと、それぞれを両腕に掛ける。 「どれにいたしましょうか?」  振り返り、みちびき様によく見えるように広げた。みちびき様の目は迷うように左右に揺れている。かと思えば、その小さな唇が開いた。 「緑にしよう」 「はい」  丁寧に着物を箪笥へと戻し、今度は違う引き出しから帯やらの小物類を取り出す。それを着物の上に起き、座っているみちびき様へと近づいた。 「失礼します」  背中に手を回し帯を解く。合わせに手をかけると、左右に割り開いた。すると、陶器のような滑らかな肌が現れる。腕を引き抜けば、その関節には球体が埋め込まれているのが見えた。  みちびき様が選んだのは、深緑に扇の柄が入った着物だった。敏司は丁寧にそれを着せる。 「少し模様が掠れてきたな」 「そうですね。来年はもう着られないかもしれませんね」  袂をそっと手に取ると、敏司が返事をする。 「でも、また縫って差し上げますから」 「それはいいが、問題は柄だ。あっちに任せるとろくなものを持ってこない」  以前着物の生地を頼んだときは、青の縦縞模様の布を持ってきたのだ。確かに着物っぽくはあるが、みちびき様には似合わない。
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