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1. 死刑囚ご一行様到着
富士に登って山の高さを知り、大雪に登って山の広さを知れ・・・昔の人が言ったそうな。
この諺にある大雪山を南に見て、高速道路を走る。
冬であれば、南の十勝岳から連なる火山の峰々が大雪山まで真っ白になる。夏の短い間だけ、蒼い山脈となる。何度も火を噴いては、麓を火砕流と泥流で襲った荒ぶる山たちだ。
高速旭川北インターから1台のバスが一般道に出た。窓には金網がある、囚人護送車だ。
国道40号方面へ向かった護送車は、すぐ左へと曲がった。東鷹栖の市街を抜け、田圃の中道を行く。国道と平行して北東へ向かう道だが、途中、小高い山の麓で途絶える。
そこに白亜の城が建っていた。
これこそ旭川刑務所、日本では数少ない2級死刑専門特別刑務所である。つまり、ここの囚人は全員が死刑囚なのだ。
護送バスが重々しい扉をくぐる。
扉が閉まり、一般社会と隔絶された空間になった。
金網の窓の中で、囚人たちは目を見張る。護送バスから10メートルほどの所に、5人の刑務官が並んでいた。
刑務官は右腰のホルスターから拳銃を抜き、壁の的に狙いをつける。銃口には太い筒が付いている、消音器である。
ぽっぽっ、銃口から青い煙が出た。的が揺れて、穴が開く。
旭川刑務所が新しい囚人を迎える儀式のひとつであった。
刑務官らは銃をホルスターに納めると、左腰からナイフを抜いた。素早い抜刀からの突き、威嚇をせずに斬り付ける技を見せた。
刃渡りは40センチ、本格的な山刀である。ぶんぶん、刀を振り、腰を落として突きをする。道場剣法ではない、実践的な型を披露する。
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