5. 男の道、女の道

7/10
前へ
/115ページ
次へ
 4211号室の片付けを終え、大沢は監視室にもどった。  布団と枕とシーツはクリーニングに出し、使用済みの下着と靴下は燃えるゴミに出す。他の私物は処分して、1番のベッドを空けた。差し入れは他の囚人たちが分けていたので、手がかからなかった。 「主任、4307号室で、ちょっと」  監視の声に、大沢は壁のモニターを見た。  4棟の3階は女の死刑囚たちの部屋がある。画面には、1人が寄って集って虐められている様子が映っていた。  女は腕力が弱いから、イジメはねちねちと続くばかり。なかなか死体を作るところまでいかない、  刑務官は囚人間のトラブルに介入しないが原則だ。が、いつまでも決着のつかないケンカは、やはり困りものだ。 「あれは・・・入ったばかりの子だな」  大沢は手元のマウスを操作して、机のモニターに囚人のデータを表示した。  1回、2回、頭を揺らした。手で膝をうち、立ち上がった。 「4211号室に新しい布団と枕を!」  大沢は2人の部下を連れ、4307号室へ来た。  ドアを開けると、中の女たちはベッドでしおらしく迎えた。 「43075番は部屋を移動する。準備せよ」  大沢の言葉に、5番のベッドで布団が動いた。左目にクマを作った顔が出てきた。 「布団は後ほど始末する。私物を持って出て来い」  大沢はドアを開けたまま、廊下に出て待つ。
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加