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山下が手と首を振った。
「おれ、父親にはなれない。子供ができても、先天性梅毒なんてなったら、かわいそうだ」
「それを言うなら、自分もです。先天性エイズなんて、シャレにもならない」
高蔵と山下は顔を見合わせ、笑みを交わした。
「梅毒・・・エイズ・・・」
江波は2人をちらと見て、ふう息をついた。この部屋で輪姦の危険は無さそう、そこは理解できた。
残る3人の男に目をやる。9番の老人は考えなくて良いだろう。
「決めたっ! あたしは生きるぞ、腹の子を利用してでも。産めるだけ産んで、生きられるだけ生きてやる。さあ、誰が種付けするの?」
坂口と須賀原は目を合わせた。
うむ、と須賀原が頷き、坂口を指した。
「こういう場合、やはり若い方が良いじゃろう。少しでも若けりゃあ、それだけ精子の元気が良いだろうし」
「おれが・・・するの」
坂口は自分を指して、口が開きっぱなしになった。
「さあさあ、種付け始めよ。石にかじりついても、股おっぴろげても、あたしは生きるんだ」
「最高齢の出産記録は60歳くらいのはずだ。そこまで産み続けられたら、最初の子供は成人してる。減刑嘆願くらい出してくれそうだね」
高齢出産の記録は多い。日本では60歳が最高齢だが、海外では66歳での出産がギネス公認の記録だ。70歳を越える出産記録もあるが、生年月日が不正確として、ギネスが公認していなかったりする。
「今から60まで・・・30人くらい産むのか。人数でギネスに載りそう」
「がんばってくれ、お母さん。おれが協力できるのは、最初の1人だけだ。毎年、協力してくれる男を確保しなくちゃな」
「そう・・・そうだったね」
坂口と江波は肩を抱き合った。
まだ、外は明るい。種付けは消灯時間が過ぎてからだ。
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