05 涙のカレーうどん

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05 涙のカレーうどん

 就業中は時の流れが遅い。  そう感じるのは、世間でわたしひとりだけではないだろう。たぶん。いや、おそらく絶対そうだ。  昼休憩のあと、だいだい午後三時前後になると……十分おきぐらいに東堂係長が目薬を注している姿が丸見えになる。ちょっと眠たそうな目と目の間をつまんだり頬をぴたぴたさすったりするのも、東堂自身の目薬タイムに付きものの仕草だ。その些細な身振りは東堂とデスクが近い部下にも、伝染っていたことを発見した。  毎日まいにちヒトミグループあちこちの事業所からは、新規採用された人たちの履歴書その他の書類が送られてくる。  それらを分類したり貼られている写真をパソコンに取り込んだあとで、人事情報を入力するわたしの出番なのだが。  入力する書類を束ねて持ってきてくれるのは一個下の後輩女子、高梨蕾ちゃんだ。  さっき蕾ちゃんが持ってきてくれた山盛りの書類を眺めながら、わたしは目薬に手を伸ばした。  まぶたを、ぎゅうっと固くつぶる。脳裏に「ぽわん」と、ケンちゃんの柔らかい笑顔とほっそりした指先が浮かんでくる。  ええと、今日は何曜日だったかな。  ……耳元で蕾ちゃんの声が聴こえた。 「火曜日です」  ぎょっとして左側に顔を向ける。と、蕾ちゃんがにこにこしながら立っていた。 「わわっ!」 「茉莉先輩、ひとり言のボリュームが大きいんだもの。わたしに聞かれたのかと思って、つい」 「ご、ごめん」  わたしは片手を立てて、額の前でちょいちょい振った。 「うるさかったかな、ごめん」  ぶつくさ言いつつ仕事している女なんて、迷惑だよね……。  
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