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そして今も。
彼は私に子育てを全部押し付けて身軽になり、第二の春を謳歌している。
1人で娘を抱える私には、成紀のように、お洒落をして恋人と過ごす時間はおろか、恋人をつくる時間も場所も、機会もない。
今日だって。
暴れる五月にようやく浴衣を着せてやり、私は引っ詰め髪にTシャツパンツのつっかけ履きで出てきたのだ。
狡くはないか。
ずいぶんと不公平ではないのか。
子供を抱えて離婚して、ひとりになった母親が、寂しさや生活に負けて男にかまけ、育児放棄や虐待に走る_____
そんなニュースは巷に溢れていて、母親が全ての責任を背負い、批判に晒される。
でも…
本当に全部、母親は悪いのか?
五月のことが、可愛くないってわけじゃない。それでも、私にだって、そうしたいって思う時もたくさんあるんだ。
私だってまだ若い。
30代の若い時を、子育てだけで終わりたくない。
自分がいっぱいいっぱいなのに、寂しくって、辛くってしかたないのに。
母親だから?
なぜ私だけ、自分の時間を犠牲にして、子供優先の生活をしなきゃいけないの!
しばらくの間私は、食い入るように成紀の広い背中を見つめ続けていた。
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