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と、
「まー…、まぁまぁ…」
はっと気づけば、いつしか五月は暴れるのを止め、大人しくなっていた。
大きな目が、不安そうに私の顔を覗きこんでいる。
「まー…」
「あ、ああ。ごめんごめん、サッちゃん。ちょっとだけ静かにしようね?」
暴れる五月を抱く手に、無意識に力が入り過ぎていたみたいだ。
“チョイッ”と人差し指で唇をつついてやると、五月は“キャッ”と嬉しそうに笑い、ふっくら柔らかい掌で、私の頬をペチペチ叩いた。
「こーら、サッちゃん。ペチペチ止めないと、コショコショするぞ!」
「キャーッ」
クロックス履きの足に手を入れて擽ると、五月はますます声を上げて笑う。
なかなか進まない行列の中、私達はしばらくの間、こうして遊んで過ごしていた。
成紀もまた、そのまま列に30分近く並んでいたが、とうとう私達に一度も気が付くことなく、彼女と手を繋いで屋台を離れて行ってしまった。
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