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田中は、夏美が何をされても田中はただ黙って見ていた。
田中は、こんなことをしてまで夏美を自分のそばに置いておきたかったのだろうか。
夏美が、どうなるのかわかっていて、田中はどうして。
田中の父親は、夏美の首元を掴み、引きずりながらコゴミの祀られている影を強く叩く。
すると、隠し扉になっているようで、夏美が放り込まれる。
そして後ろから、吸い込まれるように田中もついてってしまった。
僕も行こう、としたのにそれ以上は近くに行けない。
田中の父親は、泣きながら、蔵を出て行こうとした。
僕は、じっと田中の父親を見る。
俯き、さっきまでの元気はどこに行ったのか落ち込んだ表情をしている田中の父親は僕の目の前を横切ろうとする。
けれど、そのまま立ち去ることはなくて、僕の真横に立つ。
見えていないはずだ。
田中の父親に、僕は見えていないはずだ。
そうに違いない、と思うのに足は恐怖で震えていた。
だけど、僕の思いとは裏腹に田中の父親は僕を見て言う。
「次で、わかる」
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