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黒井 憐
僕の住む村には、奇妙な風習がある。
コゴミ
という人形が祀ってある場所で毎年8月に祭りが開かれる。
それだけなら、別にどうってことないのだけど必ずその祭りの後に人がいなくなるのだ。
それも、14歳の少女だけが。
風習、というのは語弊があるだろう。
でも、僕らの間では神様があの日、少女を選別して連れ去っているんだと言われていた。
それはまるで、神様に少女を捧げているような、そんな意味だ。
「あんなのはただの迷信よ。その証拠に、あの日からもう誰もいなくなってないじゃない」
僕がこの話を持ち出すと母親はいつもそんなことを言う。
きっと、妹の藍がいなくなっていたとしたら、そんなことは口が裂けたって言わないくせに。
どうして、僕がこの風習に執着するのか。
それは、雨野夏美がいなくなってしまったから。
そして、夏美がいなくなった8年前から、祭り後に誰か消える、ということがなくなったから。
なぜ、夏美で最後だったのか。
偶然?神様の気まぐれってやつ?
毎年、1人また1人と少女が消えていったのに。
僕は、疑問だらけだった。
忘れられない。夏美は僕の初恋の人だったんだから。
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